マーケットの学校は、2020年9月にスタートした市民参加型のワークショップです。                        マーケットとは、仮設のお店が集まり日用品や食べ物の売買が行われる、誰でもふらっと立ち寄ることができる場のこと。北本では、定期的に開催されるマーケットとして、市役所芝生広場を会場に「&green market」、北本団地商店街では「団地マーケット」などが開催されています。飲食物や物販の販売だけでなく、弾き語りや作品の展示、こどもが店主になるこどもマーケットも開催されるなど、やってみたい気持ちの背中を押す場としても機能しています。

マーケットの学校では、連続プログラムとして、市役所芝生広場で開催している「&green market」を実践の場とし、対話と実践を行き来することで、北本でのマーケットの在り方や暮らしの楽しみ方について考え続けています。

北本市役所の芝生広場で定期的に開催される「&green market」は、市内や近隣から様々な人が集まり出店者もお客さんも一緒になって思い思いに楽しむことができる、北本暮らしの魅力がギュッと詰まったマーケットです。また、最近では芝生広場を会場に、提案者と市が共催してマーケットを開催する連携事業も行われています。(リンク:市役所みどりの広場を活用したマーケットの共催)

 

10月19日、今年度3回目となるマーケットの学校が行われました。
この日は、前回9月27日のマーケットの学校特別編後に開催された&green marketの様子の振り返りから話が始まります。

チャレンジと発展のきっかけ マーケット

9月のマーケットには、以前マーケットの学校に参加された大豆農家の石塚さんも出店していました。自身で育てた大豆を使い、マーケットできなこ作りワークショップをした後、近所のシェアキッチンで「大豆のモンブラン」を提供する喫茶店をチャレンジ出店。その後は自身で製造工房を構えて製品化されています。
今回は自身の作った米を使った日本酒を出店。マーケットでのチャレンジから、徐々にステップアップして、どんどん新しいことを展開している農家さんです。

また、今回のマーケットの学校参加者の五味さんも、藍染のワークショップで初めての出店。糸ぐるまを使った実演も注目を集め、マーケットに馴染んでいました。ご本人は「とにかく準備不足で、当日はワークショップに追われて周りを見る余裕が全くなかった」とおっしゃっていましたが、その一生懸命な感じが伝わって「何かおもしろそうなことをやっている」というワクワクした雰囲気をマーケットにプラスしていました。

マーケットは何かをやってみたい人の最初の一歩として気軽にチャレンジできる場であると同時に、ステップアップしていった先でも、再び気軽に立ち寄れる場でもあります。それぞれの段階で頑張っている出店者同士が交流することで、リアリティを持って自分の活動を捉え直すことができます。

また、石塚さんは別の事業で大豆の収穫体験の受け入れにもご協力いただいています。マーケットを入り口に、農業や観光など様々な活躍の場が広がることは、個人にとっても地域にとっても、新たな可能性を開くきっかけになります。

出店者同士のコミュニケーション 場の成熟

マーケットの学校参加者の内園さんは、マーケットの途中で出店場所を変更したエピソードを話してくれました。
夜のマーケットで、段々暗くなる中で自分のブースに照明が当たらなくなってきたので不安に思っていたところ、「明るい方に移動したら良いんじゃない?」と他の出店者さんにアドバイスをもらって移動したそうです。

出店者同士の交流で場を移動したり、それぞれが考えながら使いこなし方を獲得していける関係性自体が面白いことですが、これもはじめからできたことではなく、マーケットの学校が継続し、場が成熟してきたからこそ生まれた交流だといえます。
終わり頃から同時開催された映画上映会も、以前より気軽に開催することが出来るようになっており、継続開催の中で、繰り返すことで使いこなし方が獲得されている、場の成熟を感じられる時間になっていました。

偶然出会う知り合い 帰りがたい時間

マーケットの学校参加者の関根さんは、「出店でなくラボ(焚火のブース)のお手伝いのような参加でしたが、知り合いの出店者がいたり、そこにいる人と話す時間が多く、帰りの時間になっても偶然の立ち話が続いて、思ったより長い時間楽しめた」と話します。
大人になると、友達と約束して会うのも中々ハードルが上がってしまいますが、マーケットのような場があると、偶然会ったり、ついいちょっと立ち話、というような時間が増え、結果的に地域コミュニティと関わるきっかけが増えるという効果もあるのかもしれません。

北本団地でのマーケット「縁の日」「団地ビアガーデン」

2023年度に行われた「マーケットの学校 団地編」は一年で終了しましたが、その後も北本団地商店街では隔月で団地マーケットが行われています。この日は、その番外編として開催された「縁の日」と少し前に開催された「団地ビアガーデン」の話題が出ました。
「縁の日」は、商店街に近年新しく出来たお店を中心に、おしゃれなお店が集まるセレクト型のマーケットです。以前北本にあって浦和に移転した人気のパン屋さんが浦和チームを連れて凱旋出店してくれたり、かつて団地に住んでいた人が家族を連れて遊びに来てくれたり、いつもと違う流れが生まれました。

一方で「団地ビアガーデン」は、商店街や団地に住んでいる人も一緒になって楽しむお祭りのようなマーケットです。提灯を飾り、DJチームの前で踊る人、屋外でビールを飲む人など、思い思いに楽しむ風景が見られました。

市役所芝生広場で行われる&green marketとはまた違う、生活と密着した団地商店街で行われるマーケットですが「縁の日」や「団地ビアガーデン」など、企画ごとに様々なコンセプトを持つことで、地域に賑わいを生み出す工夫をしています。マーケットという現場を持つことで、回を重ねるごとに商店会や自治会との関係も深まっていき、結果的に地域をリサーチし関係性を育んでいく場にもなっています。マーケットを通して「今まで起こらなかったことが起きていると思う」と江澤さんは言います。


他の地域でも行われる「マーケットの学校」

続いて江澤さんからは、北本以外の地域で行われている「マーケットの学校」の話がありました。北本市役所、北本団地で行われるマーケットでも違いがありましたが、他の地域ではどんな様子なのでしょうか。

「先日、神戸の明舞団地で行われたマーケットの学校に行ってきました。環境は違うんですけど、そこでもやはりコミュニケーションや雑談を求めている雰囲気は変わりませんでしたね」「また前回は、草加市役所の方からも草加市で行われているマーケットの学校の話も聞けました。草加は北本よりも都市部なので集まる人も話す内容も少し変わりますが、こちらもやはりコミュニケーションの場になっているというお話で、昨年お邪魔した新田駅前の「しんでんマーケット」でも寒い中みんな立ち話をしていて、やっぱり人が集まる、話すっていうのが基本なんだと思いましたね」

環境によって集まる人や条件は変わりますが、共通して「コミュニケーションの場として機能する」マーケットの学校の可能性が見えるお話でした。

 

自分たちにとっての ”良いマーケット”は?

後半は、12月に行われる&green marketと合わせて行われるマーケットの学校 実践編の話題へ。参加者それぞれが良いと思うマーケットについて、改めて話し合いがされました。

参加者の熊谷さんからは「この前キッチンカーの出店で参加したんだけれど、市役所のスタッフさんが明るく対応してくれてすごく気持ちよかった」という意見がでました。対して職員の方からは「働いていると、(「できるのが当たり前」になってしまって)普段の仕事の中で褒められることが意外と少ないので、そう言ってもらえて嬉しい」という応答が。

顔が見えたり話をしたりすることでお互いの様子が分かると、前向きな雰囲気を共有でき、それがマーケット全体の良い雰囲気にもつながっていきます。人に声をかけやすい雰囲気があることで、出店者同士の交流を促し、他の出店者さんにアドバイスしあえる状況を作っているという話にもつながります。これは積み重ねられてきた&green marketの関係資本といえるもので、これからも大切にしていきたいところです。

また参加者の西村さんからは「親密な関係性を育てられる規模感というのもあると思う。顔が見える範囲で、規模を大きくしすぎないから出来るつながりがあるんじゃないか」という意見が出ました。
江澤さんは「地域での合意形成って理解よりも納得で出来上がっていると思う。納得って、意見の正しさとかよりも「あの時そこにいた」とか、そういうことを理由に生まれてくることが多いと思う」「顔の見える関係の中で、こうやって自分の言葉で話したり、マーケットで自分なりのふるまいを獲得していくことが、納得を共有することにつながっているんじゃないか」と応えます。

地域の納得感や関係資本を育む練習の場になっている、というのはマーケットの大きな価値といえそうです。話し合いの中で出てきた「マーケットの良さ」を共有し、実践編でもその良さを意識してみよう、ということでこの日は終了となりました。

具体的に「〇〇をしよう」「〇〇をしたい」という話をしてマーケットの準備していくのも大切ですが、今回のように「ここが良いと思う」という話を共有して、雰囲気をゆるやかに保つのも、マーケットの学校ならではの面白さです。ゆるやかな話をつなぎながらゆっくりと準備をしてマーケットに向かう、そこで得た実感を持ち寄りまた共有していく、そのプロセス自体が、日常的な関係につながっていくのかもしれません。

(文/写真:暮らしの編集室)