【北本の農家インタビュー】
8代続く果樹園農家 新井果樹園 新井宏明さん
『受けつぐものと始めるもの 北本でつくる木熟プラム』

野菜と果物は違う。
もちろん別の植物だから違うのは当然なのだけれど、とりわけ大きく違うのは「向き合っていく時間」かもしれない。野菜の多くは種をまいてから1年以内に収穫し、また種を採って次の栽培に備えていく。一方で果物の多くは、苗木を植えてから、何年も木を育てていく。収穫まで数年かかる果樹も少なくないし、一本の樹と何十年にも渡って付き合っていく。

新井果樹園は北本市の西側、荒川にほど近い荒井地区にある。周りには畑や果樹園など、のどかな風景が広がっている。家の入り口には「プラム」と書かれたのぼり旗。手書きの看板を超えて敷地に入ると、お宅の納屋でプラムの選別とパック詰め、直売をやっている。地元でも人気の直売所で、よく常連さんが採れたてのプラムを買いに来ており、旗が出ている日であれば、誰でも直売でプラムや梨を買うことができる。

プラムの最盛期である7月中旬、夏の太陽が照り付けるお昼過ぎに、新井果樹園でお話を伺った。

プラムの違いは食べ比べてみてわかる

『プラムは見た目じゃ品種がわからないでしょ。でもね、食べてみると結構違うんですよ。』

今回取材をお願いしたのは、新井果樹園の8代目である新井宏明さん。新井果樹園で栽培しているプラムは「サマーエンジェル」「サマービュート」「貴陽」という3種類。

『サマービュートは、実がきめ細かくて酸味があるでしょ。エンジェルは、酸味が少なくて甘みが強い。この二つの後に貴陽って品種が出てくるんだけど、貴陽が一番大きくて一番甘い。皮に酸味があるからぜひ皮ごと食べてみて。』

そう言いながら、続々とプラムを切って出してくれる宏明さん。確かに、食べ比べてみると味の違いが分かる。ただ、どの品種も甘みが強く、後から口の中に爽やかな酸味が広がっていく。イメージしていたプラム特有の酸っぱいイメージとは全然違うことに驚いた。

おいしさの理由はその栽培方法にある

『甘いでしょ。うちのは、北本にもよくあるプラムやソルダムに比べて、大きさも大きくて大体テニスボールくらい。栽培方法が違うんです。』

新井果樹園では、プラムの時期が終わると梨の季節となる。宏明さんは、長年培われた梨栽培の技術を活用し、ブドウの様な棚栽培という栽培方法で、プラムを育てている。北本市のプラムでは立木栽培が一般的で、棚栽培は珍しいそうだ。

『棚栽培は、地面と水平にネットを貼って、そのネットに木の枝を這わしていく栽培方法です。ネットはつくる人の背の高さに合わせてあって、大体180㎝くらいかな。プラムって甘い実は、枝の先の方になるんですよ。棚栽培なら枝を上に伸ばさないから、丁寧に選定ができるし、木にストレスがかからないから大きく実をつけることが出来るんです。』

自分が食べて美味しいものを

そもそも、埼玉県でもあまり作られていないプラムを、なぜ栽培する様になったのだろうか。宏明さんに、新井果樹園の歴史と共に伺った。

『うちは8代続く農家で、果樹を始めたのは祖父の代からなんです。その頃から梨や栗をやっていて、自分がサラリーマンを辞めて就農したのは今から10年前でした。実はプラムを始めたのは、自分が家を継いだ後で、今から7年前なんです。最初は20本から始めて、今では50本近くあると思います。植えてから収穫までは3.4年かかるので、お店に出し始めたのも、まだ最近なんです。』

就農してから数年で新たな作物に挑戦した宏明さん。その時の想いについて聞いてみた。

『やっぱり自分の代で新しいものに挑戦したかったのかもしれない。それを今日まで続けてきたのは、自分が食べてうまいからっていうのがあります。自分が食べてうまいものは、皆にも食べてもらいたいじゃないですか。』

世代を超えて向き合う

枝を剪定し実を収穫する宏明さんは、まるで樹と対話しているようだ。

『最初は樹が小さいので、間隔を狭めて植えるんです。それが数年かけて、樹が順調に育ってくると枝が混み合ってくるので、数本残して樹を根から切って間引くんですよね。でも樹の勢いがいいし、手をかけてきているので、切るのも切りずらいんです。』

プラムの寿命は大体30年から50年ほど。これからも長い付き合いとなる。

とにかく一度食べてほしい

最後に新井果樹園の作るプラムの評判について聞いてみた。

『市内の直売所などに持っていくと、やっぱり高級品ですよねって言われてしまうんです。野菜とかは欠かせないけど、プラムはなくてもいいかなって。でも、それを一度食べて頂ければ、おいしさは伝わると思っています。ふるさと納税の返礼品にも、今年初めて出品したんですが、びっくりするくらい多くの申込みを頂きました。ファンの方も必ずいると感じています。』

プラムの旬の時期は、1年のうち7月中旬から下旬にかけての2週間しかない。そのときの為に、年間を通して手間暇をかけ、おいしさを求めてプラムを作っていく新井宏明さん。取材を終えて早速、”新井果樹園のプラム”と来年のスケジュールに書き込んだ。ぜひ皆さんも自宅の直売所に行ってみてほしい。笑顔の宏明さんが出迎えてくれる。

文 &green編集部 岡野高志

【ふるさとチョイス 商品ページへ】
https://www.furusato-tax.jp/product/detail/11233/5152656

    

新井果樹園 直売所

住所 / 〒364-0034 埼玉県北本市高尾8-30
電話 / 048-592-5937
営業時間/8:30–17:00( 農産物がある時期のみ営業)
農 産 物 / 筍(4 月 -5 月頃), プラム・梅( 7 月頃),梨(8 月- 10 月頃), 栗(9 月- 10 月頃),キウイフルーツ(10 月頃)
※季節によって収穫の時期が前後しますので、お越しの際はお電話にてご確認下さい。
※駐車場は家の前にございます。