北本市の中央を南北に走る中山道。通りに面した一角に『手造りかき餅 むさし』はあります。暖簾をくぐると、店内には様々なかき餅やお煎餅が所狭しと並んでいます。お煎餅というと、何となく丸い形を想像しますよね。お店では、正方形や長方形、粒の小さいものや大きいものまで、どこか素朴さを感じる品々が並んでいます。

『手造りかき餅 むさし』の創業は約80年前。「昭和の初め頃、私の祖父がこの地で商売を始めたと聞いています。戦前から、農家の延長でかき餅を売っていたみたいなんですが、こうやって店を構えたのは親父の代からです」創業の歴史を教えて下さったのは、3代目である秋葉竜矢さん。35年以上にわたり、家業のかき餅造りに向き合うベテランの職人です。

かき餅とお煎餅の違い

店舗の看板にも入っている“かき餅”という言葉。お煎餅と似ている印象を持ちますが明確な違いがあります。「実は原料のお米が違うんです。お煎餅は私たちが普段食べている“うるち米”が原料です。対して“かき餅・あられ”は、お餅を作る時の“もち米”が原料となります」と竜矢さん。むさしで製造している商品は、ほとんどが “かき餅・あられ”です。また、かき餅は比較的大きいもの、あられは小さいものを指します。パリッとした口当たりが特徴のお煎餅に比べ、しっかりとした歯ごたえで、もっちり食べ応えのある昔ながらのかき餅が『手造りかき餅 むさし』の特徴です。※かき餅とおかきは同じもの

常連に愛されるかき餅

むさしでは、近隣スーパーや市内農産物直売所などに加え、お煎餅の本場である草加市や東京の煎餅店にもかき餅を卸しているそうです。また、月に二回ほど開催している工場直売日には、コロナ前では一日に100人から200人ほどが訪れるほどの人気ぶり。直営店には常連さんも多く、年齢も30代から年配の方まで幅広い方が訪れます。その人気の理由をお聞きすると「昔ながらの方法で造っているだけなんですけどね」竜矢さんは少し恥ずかしそうに教えてくれました。

職人の感を大切に

かき餅を作る工程は大きく分けて九つの作業に分かれます。
①もち米を蒸す②蒸されたお米をつく③型に入れ冷やし固める④切る⑤乾燥(2日から3日)⑥焼く⑦味付け⑧乾燥⑨袋詰め
むさしでは、このすべての工程を職人である竜矢さんが手作業で行っています。「特に気を遣うのが、蒸したお米を乾燥させる作業です。うちでは乾燥室で自然乾燥に近い形でじっくりと水分を抜いていきます。かき餅は生地の水分量がとても大切で、生地に水分が多すぎるとモチみたいにプクッと膨らんじゃう。逆に水分が少なすぎると、もろくてパサパサっていう食感になってしまいます。一応水分計で測っていますが、全体がその通りでは無いので、毎日触って自分の感覚も大切にしています」一回の仕込みで約250キロほどのお餅をついて、かき餅にしていくという竜矢さん。焼きの作業にも職人の技が光ります。「生地が厚くなればなるほど、焼き上がりの食感は固くなります。うちのかき餅は固い商品も人気ですが、厚い生地ほど、乾燥も時間をかけて、焼くのもゆっくり火を入れないとうまく膨らまないんです」

感じてほしい素材の味

竜矢さんはむさしのかき餅を「余計なことをしていない素材そのもの」と表現します。「芸が無いと言えば無いんだけど、本当に素材の味がしっかり味わえるかき餅を造りたい。味付けも醤油と砂糖と最低限」素材そのものの味にこだわるため、焼き上がりの割れを予防する“つなぎ”などの原料も使用していません。そのため、ある程度割れの入ったかき餅が出来てしまうそうです。「どんなに気を付けても、やっぱり割れちゃいます。でも、その“割れかき餅”もお客さんに喜んでもらえれば」お店やふるさと納税では、この“割れかき餅”をお得な詰め合わせとして販売しています。醤油も丸大豆醤油を使い、もち米も国産の出来るだけ新しいお米を仕入れています。

味付けにも手間をかける

むさしで製造しているかき餅やあられは25種類程ですが、その原料は全て同じもち米を使用しています。つまり、もち米を蒸かしてついた後の『切り方・乾燥・焼き・味付け』で、20種類以上の多様な風味や食感を表現しています。最後の工程となる味付けも、かき餅の形状や特徴に合わせていくつかの技法を使い分けます。「溜まっている醤油に“ぼっ”とつけるのが“どぶ漬け”。一回つけて振り切ってもう一回つける。生地が厚くてしっかりしたかき餅は、この方法じゃないと味がのりません。籠の中にあられを入れて、醬油をまわしかけるのが“どらがけ”。細かいやつは、どぶ漬けだと醤油が厚くなって味のバランスが悪いんです。ザラメとかだと、醤油を入れた後に少しまわして、粘りが出たあとにザラメを入れていきます。そうしないとうまくザラメが付きません」

お客さんとの出会いも“昔ながら”

「おすすめのかき餅を教えてください」と最後にお聞きするとこんな答えが返ってきました。「初めてお店に来て下さった方には、まず最初にその方の好みをお聞きしています。うちは硬めから柔らかめまでありますが、本当にびっくりする程硬いかき餅もあります。“げんこつ”って名前なんですけどね」味だけでなく食感や形の大小など、好みはひとそれぞれ。その為、お客さんと話しながらおすすめのかき餅を探していくのだそうです。

なんだか懐かしいむさしのかき餅。食べたときに心までほっとするかき餅との出会いは『手造りかき餅 むさし』を愛する、たくさんのファンを生み出しています。

手作りかき餅 むさし(直営店)

埼玉県北本市北本2丁目258/営業時間10:00~19:00/定休日 日曜日/駐車場4台

むさし製菓 工場直売所

埼玉県北本市深井6丁目11/営業時間8:00~15:00/営業日 第4金曜日、第2日曜日/駐車場15台

手作りかき餅 むさし WEBサイト

https://musasiseika.com/index.html

北本市ふるさと納税

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