大正時代から始まる北本のトマト栽培

石戸(北本)トマトの栽培は、大正14年に輸出用の種子を取るために試験的に栽培されたことから始まりました。昭和2年には組合を組織し、収穫したトマトのうち、粒の揃った優良品は箱詰めして生のまま東京やその他の青果市場に出荷し、良品でないものや粒の揃わないものなどは全部加工され「トマトクリーム」として各地で販売、「石戸トマト」の名で全国に知れ渡りました。(出典:北本市HP)

復活した北本トマト

北本市でのトマト栽培は戦争のため一度は途絶えますが、昭和40年ごろから再びトマト栽培が盛んになります。
今では、北本市のブランド農産物として大変人気のある「北本トマト」ですが、一度は途絶えたトマト栽培復活の立役者となってきたのが、今回ご紹介する加藤トマト園です。

行列のできるトマト直売所

加藤トマト園は、北本市中丸地区で50年以上にわたりトマト栽培を営んできた老舗農家です。トマト栽培を始めたのは昭和40年代初頭。農園から程ほど近く、約30年前から加藤トマト園が運営している野菜直売所には、常時15種類以上のミニトマトが並びます。100グラムごとの量り売りスタイルも好評で、直売所のオープン時には、外にお客さんの行列ができるほど。

それぞれのミニトマトには、トマトのイラストや一言コメントが描かれており、お客さんはカラフルなミニトマトを前に、目を輝かせてお買い物を楽しんでいきます。

「お客さんと直接話して声が聞ける直売所は、私にとっても大事な場所なんです」にこやかな笑顔で話して下さるのは、加藤トマト園でトマト栽培を手掛ける加藤浩さん。トマト栽培の全てを管理している、トマトのプロフェッショナルです。加藤トマト園では、3棟の専用ハウス(約900坪)でトマト栽培を行っています。

安心と味へのこだわり

「ハウストマトの収穫は1月から7月頃まで行いますが、実は収穫が終わった8月頃から、すぐに来シーズンの準備が始まるんです」加藤トマト園のこだわり。その一つの特徴が土づくりにあります。

「夏場の暑い時期、収穫を終えたトマトを片付けたら、ハウス内の土に米ぬかや稲わらを入れていきます。そして、水を溜めてから土の表面をビニールで覆います。そうすると土の中で微生物が増えることで、土の中が酸素不足となり、トマトの病害虫や病原菌が死滅するんです。より健康的な土作りができれば、病気や害虫の発生を予防でき、より安全なトマトを作ることができます。正直、夏の一番暑い時期に作業するのでとても大変なんですが、加藤トマト園では欠かせない作業です」

トマトは、栽培方法によっては一年中収穫が可能な野菜です。加藤トマト園では、味が安定し品質的にも高い、1月から7月頃だけの時期に限って収穫を行っています。また、大玉トマトは土での栽培ですが、ミニトマトは連作障害や病気の少ない養液栽培で行い、極力薬の使用は少なくし、安心安全なトマト栽培に挑戦しています。

確かな技術をもってお客さんの声を聞く

加藤さんが栽培するトマトは年間30種類以上になります。その確かな栽培技術は、毎年依頼される種苗メーカーからの試験栽培にも現れています。

「気になる品種は、まず一年間は試験栽培をしてみて、味はもちろん食感や見た目、栽培方法なども含めて自分で確かめていきます。直売所にも少し出してみて、お客さんの反応もとても重要です。自分としても納得できるトマトが栽培でき、お客さんの評判もよければ、次年度以降に本格的な栽培へと移っていきます。最後はお客さんの声が決めてなんです」

うまみのつまった完熟トマト

東京農業大学大学院で土壌学を専攻していた加藤さん。品種ごとに栽培方法が異なるトマト栽培を、研究に裏付けられた技術と経験で細かく管理をしていきます。それだけでなく、実際に直売所にも顔を出し、お客さんとのコミュニケーションも欠かしません。先進地であるヨーロッパや他の農園への視察研修、全国の若手農家との交流を通して、自分の技術を高めながら、様々な現場を見てきたそうです。そんな加藤さんに、北本で栽培するトマトの魅力について教えてもらいました。

「大きな産地では、トマトが樹で熟す前の青い状態で出荷することが殆どです。その点、加藤トマト園や北本市の多くの農家では、ほとんどが地元や近所の直売所で販売されるため、樹で完熟した赤いトマトを収穫していきます。しっかり旨味のつまった樹熟トマトが食べられるのは、東京のベットタウンである北本市ならではと感じています。ぜひ旨味の詰まった北本トマトを味わってください」

トマトで地域づくり

北本市には、2016年に全国ご当地カレーグランプリで優勝し、ご当地カレー日本一に輝いた『北本トマトカレー』があります。2014年に北本市のB級グルメとして誕生したご当地カレーですが、そのレシピを考案したのは加藤浩さん本人です。現在でも『北本トマトカレーの会』副会長として、トマトを通じた地域づくりに邁進しています。また、小学校などにも積極的に出向き、農や食の大切さを教えています。

「収穫体験などで子どもたちがハウスに来て、トマトの説明をさせてもらうことが一年に何度かあります。その時に、樹からもぎ取ったトマトをまるかじりしてもらうんです。小さい子供たちも丸ごと一個食べちゃいます。お母さんもびっくりするくらい。そういうのを見ると嬉しいですよね。トマトや農業が持っている魅力を、より多くの人に伝えられるように。地域がもっと元気になっていくように、これからも頑張っておいしいトマトを作り続けていきます」(暮らしの編集室)

加藤トマト園直売所

//住所//
北本市中丸10-86

//営業日//
3月から7月頃まで 火曜日から金曜日13:30-16:00 土曜日・日曜日13:30-15:00
※営業シーズンや営業日などは下記のSNSをご確認下さい。

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