北本市の西側地区で、長年にわたり農業を営んできた新井農園。畑ではオクラなどの露地(ろじ)野菜を約15種類、ビニールハウス(以下ハウス)で胡瓜(きゅうり)とトマト、荒川沿いの畑で米麦を栽培する老舗農家です。作付け面積を合わせると11ヘクタール以上となる新井農園が、野菜栽培のメインとして取り組んでいるのが、ハウスで育てる「胡瓜(きゅうり)」です。農園を案内して下さったのは、農園の24代目で、胡瓜や露地野菜を主に担当されている新井剛さん。優しそうな笑顔で、私たちを出迎えてくれました。

胡瓜栽培の始まり

新井農園で胡瓜栽培を始めたのは、約50年前。剛さんのお父さんがハウスを建て、栽培をスタートしました。お爺さんは養蚕、その前から農家としてこの地に根差し、代々野菜を作り続けてきたそうです。剛さんが実家の農園に入ったのは20歳の時。それから20年間にわたり、野菜作りに向き合っています。

農園で栽培している胡瓜は、冬のシーズンで約2800本。二つのハウスを使い、1月から6月と、9月から11月の間、胡瓜を出荷し続けています。「一番できる時期で、一日につき約3000本を収穫します。それをその日のうちに荷造りして出荷まで行います。いったん採れだしたら、必ず収穫と荷造りは毎日やる。これが胡瓜屋の大変なところです」

北本では、胡瓜をメインに栽培している農家は、新井農園を含めて数軒しかありません。胡瓜は出荷時にサイズが厳密に定められている場合が多く、そのサイズで採らないと全部規格外で値が付かなくなってしまうそうです。「今の時期だと配達を終わってからの朝7時半から。夏の一番忙しい時は朝5時半から収穫します。朝採らないと、胡瓜の色が黒っぽくなってしまうんです」

質と量のどちらも高い品質を こだわりの栽培方法

胡瓜づくりのこだわりは、土づくりから始まります。ハウスの土には、農園で採れるお米の米ぬかや、もみ殻を使った有機堆肥をたっぷりと。7月には約1か月かけて、太陽光で土壌消毒を行い、納豆菌などの微生物の力も借りながら、胡瓜に最適な土を作っていきます。

「同じ場所で40年以上作っているので、どうしても病気などは出てしまいます。それでもなるべく薬に頼らずに、病気を押さえるかがポイントです」そのこだわりは、毎日の管理にも表れています。「胡瓜って実はやけどするんです。曇っている日が何日かあった後に、急に晴れたりとか、湿度を抜きすぎちゃったりすると、表面がてかてかになっちゃう。」ハウス内に入らせてもらうと、眼鏡が曇るほどの湿気があります。

胡瓜の主成分は水で、皮がとても薄いため、日差しや気温の変化に気を使いながら、毎日の湿度管理は欠かせないそうです。「ハウスに入ったときや、収穫しているときなど。いつもと違う違和感が無いかを、常に意識しています。胡瓜は一本の樹から長い期間にわたり収穫するので、病気などを早く見つけ出さないと、収穫量と味に直結してしまうんです。けっこう気を遣うんですよ」と、新井さんは胡瓜栽培の難しさを少し教えてくれました。

信頼関係を築く

新井農園の野菜を市内で購入できるのは、直売所やスーパーだけではありません。北本市役所近くにあり、行列のできるベーグル店「ココフクベーグル」で、剛さんの野菜を買うことができます。そして、野菜が売られているだけでなく、ベーグルサンドを中心に、色とりどりの野菜が、たっぷりと使われています。

他の飲食店からの引き合いもあり、直売所やスーパーだけでなく、個人的な付き合いで飲食店に卸していることも多いそうです。「ココフクさんは開店時からのお付き合い。うちの野菜に合わせてベーグルを作ってくれたり、嬉しいですよね。やりがいになります。」直売所でも、剛さんの胡瓜はリピーターの多い人気野菜。個人の農家として、お客さんや飲食店と信頼関係を築けるのが嬉しいと、剛さんは言います。

毎日食卓にあがる うちのきゅうり

農家として毎日向き合っている胡瓜づくりですが、ご自宅の食卓にも毎日の様にあがると言います。「毎日食っても飽きないです。うちだと8月は胡瓜ないんですけど、逆にない時どうしようかなって(笑)やっぱり採れたてが、食べられるから。うまいです」

ほぼ一年中、胡瓜を食べている剛さんが、特に好みだと言うのが2月初旬。「時期によって皮の厚みがいくらか違うんですが、2月最初の採れ始めは香りがいいんです」直売所の桜国屋には、2月から剛さんの胡瓜が並び始めます。胡瓜屋がつくるこだわりの胡瓜を、ぜひご家庭でお楽しみください。(2022年冬取材)

//新井農園の胡瓜を食べる//

新井農園のこだわり胡瓜は「きたもと四季の恵みマルシェ 農産物直売所 桜国屋」にて、お買い求め頂けます。