北本駅東口から徒歩2分、駅前の賑わいのあるエリアに位置する「ハワイアン・カフェキエレ」。せわしなく行き交う通りから一歩店内に入ると、ゆったりした空間が広がります。自然光が降り注ぐ大きな窓、ブルーに白のアクセントで統一された店内にはハワイアンミュージックが流れ、ビーチサイドのような雰囲気です。
オーナーは、北本駅西口でフラダンススクールを開校している草野さん。ハワイとの出会いからおすすめのメニューとその誕生秘話まで、お話を伺いました。
ハワイとの出会い
草野さんとハワイの出会いは偶然そのもの。十数年前、乳がんを発症した草野さんは、治療に専念しなければならない期間がありました。入院時、たまたま隣のベッドにいた患者さんが一枚の写真を草野さんにみせてくれたそうです。そこに映っていたのはフラダンスをする女性たち。その患者さんは、元気になったらまたフラダンスを踊るのだと、草野さんに語りました。「みせてくれた写真に写っていた女性たちが輝いて見えたんです。元気になったら私も絶対にフラダンスをやろうって心に決めました」それまでは仕事でもプライベートでもハワイに縁がなかった草野さん。この偶然の出会いをきっかけに、ハワイ文化にのめりこんでいきます。手術後、無事退院した草野さんはフラダンスを習い始めました。レッスンを始めるうちに、よりハワイ文化に魅了され、この文化を広めるためフラダンス講師になることを決意。2014年には北本にフラダンススクールを開校し、今春には開校10周年を迎えました。スクールでは通常レッスンの他に、ガン患者向けのキャンサーレッスンも開講しています。
フラオハナ
フラダンススクールと並行して、草野さんはハワイアンカフェの構想も抱いていました。構想はあるものの飲食業の経験がなかった草野さんは、実行までなかなか踏み切れなかったと言います。そんな草野さんの背中を押したのは、フラダンススクールの生徒さんたちでした。カフェ構想を話すと、調理師免許を持っている方、カフェ勤務の経験がある方が名乗り出てくれたのです。オープンに至るまで、内装やメニュー開発を生徒さんとともに考え試行錯誤しました。現在も、調理や店内スタッフをフラダンス教室の生徒さんたちが担っています。ハワイには「フラオハナ」という言葉があります。家族を意味する「オハナ」という言葉に、フラダンスの「フラ」がついた言葉で、フラダンスを通した家族のような仲間を表す言葉です。カフェキエレに広がる、講師/生徒という関係性を越えた絆は、まさにフラオハナと言えるでしょう。
お店の一角には雑貨コーナーがあります。草野さんがハワイから仕入れた小物やアクセサリー、カフェのスタッフによるハンドメイド品などが並びます。おすすめはエコバッグ。ハワイならではのキュートな柄のバッグを取り揃えています。
ゆったりとした空間の店内は、フラダンスが踊れるスペースを確保したもの。時にはハワイアンミュージックのライブや、フラダンスのイベントを開催することもあるそうです。フラオハナと共につくった店内は、随所にこだわりが散らばっています。
フローズンマラサダ
マラサダはハワイの定番おやつ。握りこぶし大の、こんがりした茶色のまあるいドーナツで、ふかふかの食感が特徴です。生地を長期発酵させることにより、ふかふかの食感が生まれるのだとか。揚げたとは思えないような軽い食べ心地で、ペロリと食べられてしまいます。カフェキエレでは独自メニューとしてフローズンマラサダを販売しています。フローズンマラサダとは、半分にカットしたマラサダにフルーツクリームとフルーツを挟み、それを丸ごと冷凍したもの。夏にぴったりのひんやりスイーツです。
そのまま冷凍シューアイスのように食べるもよし、半解凍にして外はふわふわ内側ひんやりを楽しむのもよし、全解凍して味を楽しむもよし、食べ方は自由です。フローズンマラサダが生まれたのは、草野さんとハワイの出会いのように偶然でした。たまたま遠出の予定があった草野さんは、長時間の持ち運びに備えマラサダをスタッフに冷凍してもらいました。道中、半解凍状態だったマラサダを食べてみると、外側はふかふか、中はひんやりした食感で、予期しなかったおいしさに出会いました。「これはおいしい!すぐにお店に出そうと決めたんです」
こだわりの「リリコイ」味
フローズンマラサダの味は4種類。なかでもおすすめは「リリコイ」味です。草野さんが毎年ハワイ島に通い仕入れるリリコイバターが使用されています。リリコイバターとは、リリコイ(パッションフルーツ)ピューレとバター・卵・砂糖などを煮詰めてつくるハワイを代表する味。 さわやかな酸味とトロピカルな香り、濃厚なバターの味が特徴です。
カフェでは本年春から北本トマトカレーの提供も始めました。カフェキエレの北本トマトカレーは、ココナッツミルクが入ったハワイアンテイスト。辛さは控えめでお子様でも食べられると人気があるそうです。デザートにフローズンマラサダをセットにするのがおすすめです。
愛着があるまちに、自分なりに貢献したい
草野さんが地元北本で活動を続けるのは、地元に貢献したいという気持ちが原動力になっています。都内で働いて、はじめて地元の良さに気が付いたそうです。愛着があるまちに何か自分なりに貢献したい、その思いからフラダンススクールやカフェを立ち上げました。「海はないけど北本はいいところ。海を感じたくなったらキエレに来てください」。この夏、潮風とあたたかな人の輪を感じに、カフェキエレを訪れてみてはいかがでしょうか。