くたくたに疲れた日の夜、精神的に参ってしまった時、調子に乗ってお酒を飲み過ぎた翌朝。温かいスープやみそ汁が、身体に染みわたり、ささくれた気持ちを丸くしてくれる。そんな経験がある人は多いのではないでしょうか。

北本市出身のGOHAN-MAYU(ゴハン-マユ)さんがつくるスープは、まさにどんな時でも寄り添ってくれる味わい。今回は戸田市のスタジオ「Hibigohan Studio」におじゃまして、スープづくりにまつわるあれこれについて伺いました。

自分をいたわるスープ

マユさんは北本市の出身。管理栄養士、飲食店勤務を経て、独立。シェアキッチンでのお弁当販売や仕出しをはじめ、現在はスープをメインにしたお店を営んでいます。

スープづくりを始めるきっかけは、産後育児に追われるなかで、自分のために冷凍の作り置きをしていたことでした。忙しい毎日のなかで、作り置きしておいた総菜がとても役に立ったそうです。

同じように育児や仕事に追われ忙しい毎日を送る人へ食事を届けたいと考え、手軽に食べられるスープづくりを始めました。180ものレシピが掲載されたスープ本も出版されています。

シンプルに、自由に

マユさんのスープの特徴は、旬の素材を使ってシンプルに仕上げること。味の乗った旬の素材をふんだんに使い、少量の調味料を加えることで素材の味をぐっと引き立てます。「毎日食べても安心安全なものを作る」をモットーに、うまみ調味料や化学調味料は極力使いません。

シンプルな味わいのスープは、アレンジも自由自在。サツマイモのポタージュひとつとっても、牛乳を加えてクリーミーさをアップしたり、クミンを加えて香りを嗜むスープにしたり、楽しみ方はそれぞれです。お客さんの中には冷凍スープをパスタソースにアレンジする方もいるんだとか。

また同じ素材を使ったスープでも、季節によって味が変化するのも特徴のひとつ。

たとえばサツマイモは、収穫初期の秋口はホクホクしていて味が薄く、ムロで一定期間熟成させた春頃は味が濃くなります。「作り方は同じでも、同じ味をつくろうとは思っていない」というマユさんの言葉通り、時々によって揺らぐ素材の味わいは、そのままスープの味わいにも変化をもたらします。四季折々、変化するスープを楽しむリピーターさんも多いとか。

スーパーに行けば一年を通して同じ野菜が手に入りますが、時にはマユさんのスープで季節の移ろいを感じてみるのも贅沢な体験かもしれません。

 

お守り代わりに冷凍庫に

マユさんのスープは子供に安心安全な食事をさせたいと考える親子をはじめ、頑張った自分へご褒美に買う人も多いそう。いわゆる外食の味ではない、身体をいたわる優しい味わいのスープだからこそ、ほっと一息つけるのかもしれません。

「自分のテンションが上がるものが冷凍庫に入っていると安心しますよね。甘いものや冷凍食品はずっと食べ過ぎると疲れちゃうけど、このスープは食べ続けても体に優しい。お守り代わりに冷凍庫に入れてもらえると嬉しいですね」

 

元気な素材とつきあうこと

「元気な野菜と付き合うと元気をもらえる」というマユさん。

特に北本の農家いとうふぁーむさんとはお付き合いが長いそうです。「いとうふぁーむさんの野菜は美味しいのはもちろん、食べた人を元気にしたいという気持ちが伝わって、共感できるんです」とマユさんは語ります。味だけでなく、食にまつわる哲学を共有できる人から仕入れることはこだわりの一つと言えるでしょう。新鮮で元気がいい素材を使うからこそ、食べる人も元気をもらえるのかもしれません。

さつまいものポタージュ

なかでもいとうふぁーむのさつまいもはどうしてもスープにしてみたかったのだとか。取材に伺った日も、いとうふぁーむの大きなさつまいもでポタージュをつくっていました。焼いた大きな芋の皮をむき、潰していきます。スライスした玉ねぎをいため、潰したサツマイモと牛乳と合わせて混ぜあわせ、最後に少しの塩を加えて完成です。

すすめられるまま器にスプーンを差し入れると、スプーンから伝わってくる手応えが違っていた。口の中に入れる前に、そのざらりとした感触と、それにつづく滑らかさが手から伝わってきて、手がおいしさを知り、その次に舌や喉が声をあげた。

「うわぁ」———それしか言えなかった。

本当においしいときは、「おいしい」などと味わうより早く反射的に野生の声しか出ない。

———吉田篤弘「それからはスープのことばかり考えて暮らした」200頁より抜粋

 

とろりとした食感、塩で引き立てられたさつまいもの濃厚な香りと、そのあとにつづく優しい甘み。口に運ぶと思わず「うわあ」とか「おおー」という声が出てしまいます。

いとうふぁーむのさつまいもは、優しい甘さと筋っぽさのないなめらかな口当たりが特徴。濾さずともまろやかな口当たりに仕上がります。やわらかい甘さがふわりと広がるさつまいものポタージュは、ほっと一息つきたいときにぴったりな一皿です。

食事の相談ができる場所

戸田市のスタジオ「Hibigohan Studio」では作りたてのスープを頂けるほか、季節の冷凍スープが購入できます。また店内でレッスンやワークショップを開催することも。

マユさんがお店を持ちたかった理由の一つに、食事の相談ができる場所をつくりたいとう思いがありました。義務教育を終え、給食を食べる機会が無くなれば、管理栄養士と繋がる機会はほぼありません。しかし食事は生きているあいだ、ずっと続くもの。一人暮らしでも、家庭があっても、毎日つくり続ける必要があるのに、それについて専門家に相談できる場所はなかなかありません。マユさんは「今日の夕飯どうする?を気軽に相談できる場所があるといいよね」と語ります。

食事についておしゃべりしながら、美味しいスープをいただく。心身ともにほっとできる「Hibigohan Studio」にぜひ足をお運びください。

 

//ゴハンマユさんのスープが購入できる場所//

Hibigohan Studio

〒335-0022

埼玉県戸田市上戸田2丁目36-8 荻野ビル1F

【営業時間】

[月〜土] 7:00 〜 18:00

[日・祝祭日] 9:00 〜 15:00