金子果樹園の完熟ブルーベリーと家族の物語

会社に勤めている人にとって『定年』をきっかけに、自身のライフステージが大きく変化することも多いのではないでしょうか。「さあ人生の後半戦をどんなふうに歩もうか」と思案するとき。そのまま勤め人として。自分の趣味や家族と人生を楽しむ。全く新たなことに挑戦する。定年というのは少し大げさに言うと、自分と周囲との“つながり”の中から、これからの生き方を改めて考える節目なのかもしれません。

今回取材をお願いした金子果樹園の金子尚弘さんは、定年をきっかけに地域で農業と共に歩む人生を選択しました。代々受け継いできた土地や風景を守り、農を通して様々な人との縁を紡いでいく。尚弘さんとそのご家族に、地域とのつながりやブルーベリー栽培のこだわりなどをたっぷりお聞きしました。

ブルーベリー畑は里山の中に

北本駅から荒川方面に車を走らせること10分。住宅街を抜けると、青々としたみどりの里山が広がっています。幹線道路から少し入ると、金子果樹園のブルーベリー畑に到着しました。出迎えて下さったのは金子果樹園代表の金子尚弘さん。お宅の隣には、きれいに剪定されたブルーベリーの果樹園が広がっています。

品種は20種類!それぞれの個性が光る

金子果樹園で育てられているブルーベリーは約750本。品種は20種類程あり、そのほとんどがポットと呼ばれる鉢で栽培されています。「ブルーベリーは品種によって収穫時期が違います。6月中旬から8月上旬まで順番に収穫していくんですよ」と尚弘さん。「粒も大粒の品種は500円硬貨程の大きさになります。さあどんどん食べてみて」果樹園を案内してもらいながら、群青色に色づいた完熟ブルーベリーを枝から直接頬張ると、濃厚な甘さと爽やかな酸味が口いっぱいに広がります。「食べ比べてみるとそれぞれ個性があるでしょ」と尚弘さん。時折立ち止まりながら、それぞれの品種の特徴を丁寧に説明して下さいます。

お店で味わうこだわりの味と香り

金子果樹園のブルーベリーはそのおいしさが評判を呼び、お店でスイーツやパンとしても味わうことができます。特に人気なのが、北本市で行列のできるクッキー店『クッキークル』の『ブルーベリーとピスタチオのかき氷』。果樹園の完熟ブルーベリー『ユーリカ』がふんだんに使われ、ピスタチオとの相性も抜群です。また、市内で人気のベーカリー『ぱん屋 そらのとびかた』では、果樹園のブルーベリーで天然酵母が作られ、手づくりパンにもたっぷり使われています。その他にもカフェでパフェやパンケーキに使用されたり、高級フルーツ店で贈答用に販売されていたりと、色々な人気店で金子果樹園のブルーベリーに出会うことができます。

品種ごとに違う栽培方法

スイーツ店や高級フルーツ店も認める金子果樹園のブルーベリー。そのおいしさを生み出すポイントは、丁寧できめ細やかな栽培管理方法にあります。「ブルーベリーって品種ごとに味の特徴が全然違うんです。ものすごくフルーティでみずみずしい品種。単純に甘さや酸味の強いタイプなど様々です。その個性や特徴が一番発揮されるように、剪定や肥料をあげていきます」と尚弘さん。ブルーベリーは味だけでなく、ブドウの様に房でなるものや分散してなる品種もあり、実のつき方も種類によって違います。「枝に多く実りすぎると味わいも分散していきます。だから、木にどういう風に実をならせるか、剪定がとても大事になります。品種ごとに剪定の方法は変えていて、ここはノウハウと言えるかな」と尚弘さん。ブルーベリーの花が咲くのは毎年4月から5月頃。園の隣には蜂の巣箱が置かれており、花の受粉は北本市内で養蜂を営む根津養蜂園のミツバチたちが担っています。

じっくりと観察すること

常に翌年のことを見据え、どこの枝にどれくらいの花を咲かせて、実を結ぶように木を整えていくか。日当たりや木と実のバランスを考えて剪定や管理を行っていきます。「でも、冬に剪定してから半年後に収穫ですからね。うまくいったかどうかが半年後にわかるんだから、まだまだ試行錯誤の連続です」と尚弘さん。金子果樹園では、品種ごとに適した栽培方法だけでなく、安心安全な果物づくりにもこだわっており、出荷シーズンの農薬は不使用。その他にも剪定方法や肥料のあげ方など、出来るだけ薬に頼らない栽培方法を実践しています。

愛情をこめて育てる

きれいに整備された園の中を歩いていると、ひっそりと草に囲まれたブルーベリーを見つけました。「これはスパルタングローという品種です。気難しくて乾燥に弱く、草原の中に生えている方がいい実が生る。おもしろいですよね。しかも本当に美味しいのが一時期だけ。だから収穫のタイミングが難しいんですが、めちゃくちゃ香りがいい」と尚弘さん。その場で頂くと、他の品種とはまた違う上品で強い香りが鼻に抜けていきます。園をめぐりながら「ユーリカちゃんはね」と、わが子の様に品種ごとの魅力やユニークな点を説明してくれる尚弘さん。その言葉からもブルーベリー栽培に対する愛情が伝わってきます。

養蚕から果樹の栽培へ

金子果樹園は14代以上続く農家で明治の頃は主に養蚕を手掛けていました。「私の子供のころは家の周りも一面の桑畑でした」と尚弘さん。地域でも有数の養蚕農家であった金子家は、時代の移り変わりと共に養蚕から果樹栽培へと徐々にシフトしてきたそうです。農業をとりまく環境が目まぐるしく変化する時代の中、金子家は果樹栽培でも地域のまとめ役として新たな作物にチャレンジします。県内でも有数の収穫量を誇っていた北本のプラム。尚弘さんのお爺さんは、 昭和30年代にプラム栽培を地域で積極的に進めた人物の一人です。また、お父さんは公務員や獣医をしながら、現在金子果樹園の主力な作物である銀杏などを植えてきました。その中で約20年前から始まったブルーベリー栽培ですが、当初は尚弘さんのお母さんが栽培を担当しており、ポット栽培ではなく20本から30本程の地植え栽培でした。今では約750本をポットで栽培する金子果樹園が、どのように農や地域に向き合ってきたのか。ここからは金子家のリビングに取材会場を移し、尚弘さんとその家族の物語をお聞きしていきます。

金子果樹園の完熟ブルーベリーと家族の物語《後編》へと続きます

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■公式SNS&オンラインショップ

金子果樹園公式Instagram//金子果樹園公式オンラインショップ//ポケットマルシェ(オンラインショップ)

■ブルーベリーが購入できるお店(6月下旬~7月頃まで)

畑の中の採れたて野菜直売所 まんぼうマルシェ

※販売時期については店舗のSNS等をご確認下さい。

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