北本市高尾地区でブルーベリーや果樹の栽培を行う金子果樹園。代々受け継いできた土地や風景を守り、農を通して様々な人との縁を紡いでいく。金子果樹園代表の金子尚弘さんとそのご家族に、地域とのつながりやブルーベリー栽培のこだわりなどをたっぷりお聞きしました。インタビュー後編のスタートです。 //前編はこちらから//

サラリーマンを引退し農業の道へ

小さい頃から家業である農業を手伝っていた尚弘さんが、本格的にブルーベリー栽培を始めるのは62歳の時。サラリーマンを引退し、家族と共に農の世界へと本格的に足を踏み入れました。「爺ちゃんや親父、お袋が残してくれたものと、自分ができることを考えてブルーベリーにたどり着きました。お袋が植えた地植えのブルーベリーは古い品種で果肉も柔らかく、それだと流通や保存も難しい。そこで新たに苗木を購入して始めることにしたんです」と尚弘さん。サラリーマン時代に培った経営感覚を基に、ブルーベリーの市場性やその魅力に惹かれ、2017年からポット栽培に挑戦してきました。「不安をかかえながら失敗しまくって聞きまくって調べまくって怒られまくって。全国尋ね歩いて設備面とか含めてですね。ただ、見たりするのと自分でやるのとは全然違う。やりはじめてから失敗ばかり」と尚弘さん。2024年3月には、大雪の影響で防鳥ネットが倒壊するというアクシデントにも見舞われました。

夫婦で支え合いながら

金子さんのブルーベリー栽培の歩みは、妻の雅子さんと二人三脚で紡いできた歴史でもあります。栽培を始める際には苗木店にも二人で行き、栽培方法や品種を共に研究してきました。尚弘さんが、ブルーベリー栽培を本格的に始めるときにどう思ったのか、雅子さんに質問してみました。「まずね、ブルーベリーは脚立がいらないじゃない。それがいいなって。だってうちのおばあちゃんとか、銀杏の木から木へ登って落っこちたりしてる。ブルーベリーは低くて安全だなって」尚弘さんの頑張りを間近に見てきた雅子さんですが、最近は特に心配していることがあるそうです。「尚弘さんはサラリーマンのときも24時間働くタイプで、休みの日でも草刈りとか畝刈りとか休みなし。それが今でも続いていて、夜8時でも9時でもブルーベリーに平気で水撒いてる。この水が家の裏にある井戸水で枯れないし、どんなに使っていても助けてもらえる水。でも、本当に毎日水を撒いていて、暗くなってもやってるから、倒れるまでわかんない。体のことを考えていいかげんにしてほしいと、心配になることがあるんです」と雅子さん。妻からの指摘を受け「おれ怒られてるのかな」と苦笑いの尚弘さん。夫妻は幼稚園からの同級生だそうです。雅子さんは尚弘さんの健康を気遣い、実際の作業に加え食事や生活面でも尚弘さんをサポートしています。

家族それぞれの役割

金子果樹園のブルーベリー栽培は、収穫・出荷・販売管理を家族皆で手掛けています。息子さんのお嫁さんである亜友美さんもその一人。金子果樹園の一員として、主にネット販売のショップやインスタグラムの運用を担っています。「亜友美さんは金子果樹園の知恵袋。金子果樹園のウェブショップも亜友美さんの提案。そういうことって、思っていても中々できないじゃない。それを次々に実行してくれる」と尚弘さん。「赤ちゃんのお世話しながら本当にすごい」と雅子さん。隣で聞いている亜友美さんは「そんなことないですよ」と恥ずかしそうに首を横に振ります。

楽しみながら健康に

金子果樹園のウェブショップを開くと、最初に目に入ってくるフレーズ『美味しく楽しく健康に』この言葉には金子夫妻だけでなく、亜友美さん自身のメッセージも込められています。「育てている私たちも楽しくがモットー。このブルーベリーで何作ろうかな、タルトにしようかなとか考えるの、楽しいじゃないですか。お客さんにもそういうワクワクが伝わったら嬉しいですよね。冷凍すると日持ちもするし、離乳食とかスムージーで赤ちゃんも食べられるので、家族皆さんでぜひ楽しみながら味わってほしい」と亜友美さん。また、ブルーベリーはバナナなどに比べてカリウムの含有量が少ない為、腎臓病の方もネット販売でリピートして下さっているそうです。「果物に制限があるけどブルーベリーだけは大丈夫って方がいて。とても美味しくて家族で食べてます!ってコメントを頂きます。食べて下さる方が健康になるのが一番うれしい」ウェブショップを通じて全国のお客様と向き合う亜友美さん。尚弘さんと雅子さんが育てるブルーベリーのおいしさと魅力を、どうやって伝えたらいいのか。自身も楽しみながら日々試行錯誤を続けています。

ゆるやかな縁をつなげていく

金子果樹園のブルーベリーは、蓮田市にある野菜直売所『まんぼうマルシェ』にシーズン中はほぼ毎日出荷をしています。北本市の人気クッキー店『クッキークル』とのコラボレーションは、この『まんぼうマルシェ』をきっかけに生まれました。「クルさんのスタッフがまんぼうマルシェで、うちのブルーベリーを見つけてくれて。それで気に入ってくれてつながりました」と尚弘さん。商品開発にあたっては、クッキークルの店主ナオさんと一緒に、金子果樹園で栽培する様々な品種のブルーベリーで何度も試作が重ねられました。そして、クルのかき氷にベストマッチな『ユーリカ』が選ばれました。実際にかき氷を食べた雅子さんは、その時の感想をこう表現してくれました。「食べたときに、ユーリカの味が見事に表現されていてびっくりしました。クルちゃんの試行錯誤とセンスは本当にすごい!あと、コミュニケーションをとりながらフィードバックが返ってくることも嬉しいんです」栽培のプロとお菓子作りのプロが縁でつながり、まだ見ぬ“おいしい”を一緒に生み出していきます。

手が届くから

尚弘さんは北本市と川島町の若手農家で生産グループを2017年から結成しています。グループでは、共同で野菜や果樹を問屋に卸したり、栽培についての情報共有を行うなどの活動を行っています。尚弘さんはこのグループの発起人でもあり、グループの中で一番の年長者でもあります。グループ結成の理由を聞くと「販路の開拓はもちろんだけど、一生懸命やっている人を見ると気持ちがいいでしょ」こんな答えが返ってきました。「自分はそれができる場所にいて手が届くから。だから皆で協力してつなげていきたい」若手農家の応援だけでなく、地域のつながりを大切に、地区の景観や文化を次世代に残していきたいと話す尚弘さん。“農という物語”を通して、人と人・地域と未来を有機的につないでいく、金子尚弘さんと家族の挑戦はこれからも続いていきます。

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金子家の[納屋]と[棟札]

金子さんご夫婦のお住まいは築130年の納屋をリノベーションしたお宅です。1階2階が吹き抜けとなっており、広々とした空間が広がっています。130年以上前の納屋とは思えないほどモダンで明るいリビングから天井を見上げると、立派な梁を見ることができます。「この建物はここよりもっと南側にありました。それを45年位前かな。鴻巣の工務店にお願いして曳家(ひきや)してもらったんです」と尚弘さん。この養蚕を目的とした納屋を建てたのは尚弘さんの4代前にあたる高祖父ですが、改装の時に屋根裏から手書きの立派な棟札が見つかりました。「梁に打ってあったの。表裏に描いてあってね。そりゃあ捨てらんないし、母屋の床の間に置いてあるよ」と、尚弘さんは見つけたときの感動を教えてくれました。

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夏に最高!ビネガーソーダ&冷凍ブルーベリーのススメ

金子果樹園に取材で伺うと、いつも出して下さるのが、特製のブルーベリービネガーソーダ。酸味と爽やかな甘み、ブルーベリーの風味が相まって最高に美味しいドリンクです。ブルーベリーには健康に良いとされる成分が多く含まれ、ビネガー(お酢)は暑い夏の疲労回復と健康増進にピッタリ。冷凍ブルーベリーを使って簡単につくれて、見た目も味も楽しめます。お酢が苦手だった尚弘さんも大のお気に入り。作り方をご紹介します。

//金子果樹園特製 ブルーベリービネガードリンクの作り方//

① ブルーベリーを冷凍する。(冷凍ブルーベリーの方が早く、キレイに美味しく出来ます。)
② 冷凍したブルーベリー、氷砂糖、リンゴ酢を同じ量(g)瓶に入れます。
〇 瓶の大きさは500mL~1L程度、ご家庭にある蓋付ガラス瓶をご利用下さい。
〇 冷凍ブルーベリーを底に入れてから氷砂糖を上に入れます。それを交互に2~3層位繰り返して入れてから、最後にリンゴ酢を入れると早く出来上がります。
③ そのまま室内で1~2週間寝かせます。(お酢が入っているので冷蔵保存する必要はありません。)
④ 氷砂糖が溶けたら出来上がりです。(氷砂糖は瓶の底に沈むので、かき混ぜて下さい。)
⑤ お好みの量をコップに取り、水や氷で薄めてお召し上がり下さい。
サイダーや炭酸で割ったり、冷凍ブルーベリーを添えると、更に彩り豊かで見た目もおいしいドリンクになります。金子果樹園ではお酢にリンゴ酢を使うのがポイントです。暑い夏におすすめですよ。

採れたてをそのまま食べるイメージのあるブルーベリーですが、冷凍することで長期保存が可能になり、一年中、様々な用途に使う事が出来ます。冷凍の際は、パックやタッパーではなく、チャック付きの袋などで小分けにして冷凍すると、品質が落ちずにGood。また、冷凍したブルーベリーはドリンクだけでなく、ジャムにしてももちろんOKですし、ブルーベリーソースとして肉料理に使用すると、肉が柔らかくなり、料理の味を一段と味を引き立てます。金子果樹園では冷凍ブルーベリーもウェブショップで販売していますが、リピーターの方の中には毎朝ヨーグルトに数粒入れて楽しまれる方もいらっしゃるそうです。冷凍ブルーベリーの活用法はまだまだありそうです。金子果樹園のブルーベリーを活用して、みなさんのブルーベリーライフがさらに豊かになりますように。

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■公式SNS&オンラインショップ

金子果樹園公式Instagram//金子果樹園公式オンラインショップ//ポケットマルシェ(オンラインショップ)

■ブルーベリーが購入できるお店(6月下旬~7月頃まで)

畑の中の採れたて野菜直売所 まんぼうマルシェ

※販売時期については店舗のSNS等をご確認下さい。

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