お気に入りのアクセサリーを身に着けると気分があがるものです。さらに、おばあちゃんから譲ってもらった指輪、母親がお祝いに買ってくれたイヤリング、思い出の品のリメイク品など、物語や意味があるものはより身に着けることが嬉しくなるのではないでしょうか。

今回は、使う人それぞれが意味や価値を見出せる、草木染めラタンアクセサリーブランド「ゆのわ」の島田ユウ子さんにお話を伺いました。

島田ユウ子さんは、北本市出身・在住のデザイナーです。フリーのデザイナーとしてお仕事をする傍ら、ラタンアクセサリーの作家活動をしています。

©️2024 YUNOWA design

ラタンは籐(トウ)というヤシ科の植物の英名です。しなやかで軽い繊維が特徴で、乾燥させたつるは家具や籠などに用いられています。ラタンと言えば、明るいベージュ色が定番。しかしお招きいただいた自宅兼アトリエには、色とりどりのやわらかな色合いのアクセサリーが並んでいました。

島田さんがつくるアクセサリーで用いるラタンは、草木染めで染色されたもの。埼玉県草加市の植木屋・緑酔園とコラボレーションし、植物の健やかな成長のために必要な剪定で出た木の枝や葉、花などを染料として利活用し、アップサイクル作品として新しい価値を生み出しているのだそう。

ピンク色のものは桜で染めたもの、オレンジ色はセイヨウアカネ、黒はクロガネモチ、藍、くすんだ緑色は緑茶で染めたものです。化学染料とは違い、自然素材ならではのやわらかな色が特徴です。

©️2024 YUNOWA design

 

ラタンは非常に軽く着用しやすいだけでなく、アレルギーフリーな素材でもあります。紐部分に国産の絹糸をセレクトし、金属アレルギーの方も安心して着用できるネックレスもあります。絹糸の上品な艶が、シックなラタンの色合いにマッチしています。

©️2024 YUNOWA design

 

自然の染料を使っているので、季節やその時々によって色が変わるのが大きな特徴だと島田さんは語ります。

「ラタンも、草木染めも自然の素材なので、ラタンそもそもの色も違いますし、草木染めで染まる色も変わります。それは季節だったり、染料の量だったり、そのときの気候だったり、変化の原因はさまざまです。例えば桜ひとつとっても、去年は鮮やかなピンクが出て、今年は渋めのピンクが出ました。この色が欲しい、と思ってもまったく同じ色が今後出せる確証はありません。良くも悪くも、本当に一期一会のアクセサリーなんです。」

©️2024 YUNOWA design

 

日本伝統の「飾り結び」を使って

「ゆのわ」のラタンアクセサリーは、良縁・開運などの意味を込められた日本伝統の飾り結びがモチーフになっています。「良縁」を意味するあわじ結び、「開運」を意味する梅結び、「長寿」を意味する亀の子結びなど、いくつかの結びを連続させたりと、アレンジを加えながら形をつくります。

©️2024 YUNOWA design

 

独学で飾り結びを始めたという島田さん。制作の傍ら、飾り結びの歴史や意味の探求も続けています。草木染めのアクセサリーには、結びの意味だけでなく花言葉も掛け合わさり、幾重にも想いがこめられています。普段使いはもちろん、節目につける装飾品や贈り物にもぴったりです。

「日本伝統のデザインなので、気に入ってくださる方が多いですね。そういう意味では、自分が新たに何かを生み出しているというより、古来より伝わる知恵をお借りしてるような感覚に近いかもしれません。世代を超えて受け継がれてきたものを、今の時代に合わせた形にして残していきたいという意識がありますね。」

 

緑酔園との出会い

草木染めを担当している植木屋の緑酔園さんと島田さんとの出会いは偶然でした。2023年の冬、島田さんはハンドメイドマルシェに出展。するとたまたま通りかかった緑酔園の新規事業担当者の目にとまります。そこからコラボレーションが決まり、春には草木染めを用いたラタンアクセサリーの制作を開始。瞬く間に様々な色のラタンアクセサリーが出来上がりました。

 

 

 

©️2024 YUNOWA design

 

緑酔園さんの出会いと同じく、アクセサリー制作を始めたのも不思議なご縁だそう。デザイナーのお仕事で、たまたま水引作家さんのロゴデザインを担当したのがきっかけでした。水引の魅力を知るためにも、一度体験してみようと水引にトライしてみた島田さん。そこで結びの魅力に出会いました。

魅力を感じた一方、水引の鮮やかな色合いが普段のファッションとはマッチしにくいなと感じたそう。そこでナチュラルな風合いのラタンを素材にした制作をはじめました。「ゆのわ」というブランド名も、コピーライターでもあったその水引作家さんに決めていただいたのだとか。「私の名前がユウ子なので、その「ゆ」と、私から輪が広がっていくイメージで「ゆのわ」という名前に決めてもらったんです。」

作品が引き寄せる縁

飾り結びが持つ「良縁」「開運」といった意味の通り、島田さんを取り巻く制作環境は、周りの人々の縁が深く影響しあっています。作品販売をはじめた偶然も、緑酔園さんに出会った偶然も、まさにアクセサリーがもつ「良縁」の意味が作用しているのかもしれません。まさに、「ゆのわ」のブランド名の通り、幾重にも縁の輪が広がっています。

縁が縁を呼び

2024年の夏には、毎年パリで開催されている、日本文化の総合博覧会「JAPAN EXPO」に出展。日本の伝統文化や芸術、工芸などを紹介するエリアでかんざしやアクセサリーを販売しました。はじめての海外出展、準備もイベント中も大変なことがたくさんだったそうですが、そのぶん多くの学びを得たかけがえのない機会になったと語ります。

©️2024 YUNOWA design

 

今後も様々な方法で作品を伝えていく活動の予定があるという島田さん。これからの展望について伺うとこんな答えが返ってきました。

「お話ししていて、改めてご縁に支えられてきたことを実感しました。この結びが繋がりを引き寄せているんだとしたら、あまり自分のこうしたいああしたいを入れるよりも、流れに身を任せてもいいのかなと思います」

無理のないペースで、無理のない範囲で、できることを広げていく。島田さんのアクセサリー制作は、アップサイクルだけでなく、制作スタイル自体も持続可能なスタイルとして魅力のひとつなのだと感じました。

販売場所や今後のイベント出店の情報は「ゆのわ」インスタグラムにてご確認ください。

YUNOWA[ゆのわ]Instagram