つながりをデザインするあすなろ学園の「さをり織り」#北本良品

北本市運営の福祉施設「あすなろ学園」では、毎週火曜日に「さをり織り」の織物が製作されています。制作の様子を取材しながら、作品に込められたストーリーをお聞きしました。

自由な発想で作られる

織物とは、たて糸とよこ糸が織機によって互いに組み合わされ、交差してつくられる布のこと。一定のパターン通りに縦横の糸を組み合わせて製作されていくのが典型的な織物の織り方です。対して「さをり織り」は、決められたパターンが無く制作者の自由な意思で製作されます。また色や織り機・素材も決まりが無いのも特徴の一つです。（出典：http://www.saori.co.jp/）

均一性やパターンではない、自由な発想で作られる「さをり織り」。自由な織り方のため、作られる作品はとても個性的であり、それを製品として仕上げていくのには技術と情熱が必要です。

地域の居場所

障害福祉サービス事業所「あすなろ学園」が開所したのは昭和59年。約40年にわたり障害を持った方の居場所として地域に開かれています。通われている方の年齢は幅広く18歳から64歳の約45名。そのうち三人に一人は15年以上通われています。アットホームな雰囲気の中、さおり織りや陶芸の製作、軽作業や畑作業が行われています。「あすなろ学園に毎日行きたいと思ってもらえる。そんな施設を目指しています」とスタッフさん。

皆で食卓を囲む

学園に通うメンバーの皆さんが、とても楽しみにしていることの一つに給食があります。あすなろ学園では毎日給食を提供しており、施設内で手作りをしています。「温かなご飯を皆で食べることは、とても大切な時間です。お家にメニュー表が貼ってあり、それを毎日見て楽しみにしている方もいるんですよ」畑で採れすぎた野菜やサツマイモなどが、たまに給食やおやつに出ることも。献立は栄養士が作成しており、1年を通して同じメニューは一日も無いそうです。「大変だけど利用者さんに喜んでもらえるのが嬉しい」手間暇がかけられた給食も、あすなろ学園の魅力です。

寄り添いながらつくっていく

学園では曜日によって様々な活動に取り組みますが、毎週火曜日は織りや陶芸などが行われています。あすなろ学園では10年以上前から「さをり織り」に取組んでおり、経験豊富なスタッフが、メンバーの個性や特性に寄り添い、対話を通して一枚の布を織りあげていきます。「まずどんな長さにしようといったところから相談していきます。次に糸を何色にするとか。びっくりするような色の場合もあるけれどそれも個性。まずやってみよう。やってみないと分からいことがとても多いんです」

織りの最初から最後まで

メンバーの皆さんは、時間を忘れるほど織ることが大好きだそうです。「織りに関わる工程では、最初から最後まで出来るだけメンバーの方に携わってもらいます。織り機は縦の糸を通すのが、本当に細かくて難しいんですが、うちでは出来る限り挑戦します。綿の糸を使うことが多いので、切れることも多い。でも、糸が切れたらじゃあつなごうかって。難しいから中々進まないけれど皆さん真剣です」出来るだけ多くの工程にメンバーが携わることは、達成感や多くの学びに繋がってくるのだそうです。

力を合わせて届ける

織りが出来上がってきたら、スタッフがミシンなどを使いながら仕上げていきます。「一枚一枚丁寧に織られた布には、メンバーの個性が現れています。その個性を生かしながら、どうやったら使いやすいかな。そんな想いで、ポーチやバッグなどを仕上げていきます」

バッグには布がすれてしまうところに皮があてられています。「市役所で販売していると、使い込まれたポーチやバッグを持ってきてくれる人がいらっしゃいます。リピーターの方や2度目3度目の方、電車に乗って買いに来て下さる方など、沢山の方が会いに来て下さります。その方たちとお話ししながら、改善点とか商品のアイデアを膨らませていくんです」スタッフの皆さんは、嬉しそうにお客さんとのエピソードを教えてくれました。

つながりをデザインする

「自分の織った作品が売れたらうれしそうに『売れたんだよ』って報告してくれるんです。そんなときは、もっと頑張らなくちゃ！って、気持ちが引き締まります」自分の作った作品が誰かの手にわたり、暮らしの中で使われていく。そのつながりは、関わるメンバー皆さんの大きな喜びに繋がっています。あすなろ学園の「さをり織り」は、様々な人とのつながりを紡いでいきます