マーケットの学校について
マーケットの学校は、2020年9月にスタートした市民参加型のワークショップです。
ここでいうマーケットとは、仮設のお店が集まり日用品や食べ物の売買が行われる、誰でもふらっと立ち寄ることができる場のこと。北本では、奇数月に市役所芝生広場で「&green market」が、偶数月には北本団地商店街で「団地マーケット」などが開催されています。飲食物や物販の販売だけでなく、音楽や作品の展示、こどもが店主になるこどもマーケットも開催されるなど、やってみたい気持ちの背中を押す場としても機能しています。
マーケットの学校では、主に市役所芝生広場で開催している「＆green market」を実践の場とし、北本におけるマーケットの在り方や暮らしの楽しみ方について考え話し合っています。マーケットの多様な可能性を考えながら対話と実践を行ったり来たりすることで、まちや場所、地域や関係性に対する理解を深めていく連続プログラムです。
きたもとで考えるマーケットの学校 芝生広場編
北本市役所の芝生広場で定期開催される「&green market」は、市内や近隣から様々な人が集まり出店者もお客さんも一緒になって思い思いに楽しむことができる、北本暮らしの魅力がギュッと詰まったマーケットです。また、最近では芝生広場を会場に、提案者と市が共催してマーケットを開催する連携事業も行われています。（リンク：市役所みどりの広場を活用したマーケットの共催）
様々なマーケットが開催される北本市役所芝生広場ですが、この場所はあくまで庁舎敷地の一部であり、公民館の様な貸館利用はできません。2024年度のマーケットの学校では、庁舎敷地でありながら公園のように活用されたり定期的にマーケットが開催されている『北本市役所芝生広場』を舞台に、改めて『公共の場』について皆で考えます。
公共の場について考える
2024年度は「公共の場について考える」を軸に話し合いを続けてきました。各回ごとに参加するメンバーと一緒に、雑談形式で話をしながら、様々なトピックを話し合うのが『マーケットの学校』です。このレポートでは2024年12月14日に行われたマーケットの学校 第3回ワークショップの様子を振り返ります。
他の街で行われているマーケット
今回の講座の前日12月13日に、同じく埼玉県草加市で行われているマーケットの学校で企画実践された「SHINDEN Market」の視察に伺いました。人口規模や街の大きさなど条件が違う場所で開催されているマーケットの様子から、北本にも通じること、全く違う事例の話など、様々なヒントをもらいました。この日のワークショップは、前日の視察に参加したメンバーが草加のマーケットの様子を参加者全体にシェアしつつ始まりました。
・東武スカイツリーライン新田駅東口で初めて行われた「SHINDEN Market」
・通勤通学の帰り道のお客さんをターゲットに夜の時間帯で開催
・8店舗くらいの小さいマーケット、でも駅から賑わいが見えた
・とても寒かったけどガスストーブが大活躍
当日はとても寒い日だったのですが、我々が到着した16時頃にはもう多くの人で賑わっていました。担当の職員さんにお話を伺ったところ、初開催なのでやってみるまでお客さんが集まってくるか不安だった、とのこと。しかし世代を問わず多くの人が集まっていました。中でも印象的だったのは子供達が多かったことです。昔遊びの体験コーナーで体を動かして遊んだり、お母さんはホットワイン、お子さんはクレープを食べながら楽しんでいました。
大活躍していたガスストーブの周りには人が集まり立ち話。「寒いねー」からどこから来たの？何食べてるの？など会話が生まれていました。そもそもガスストーブ自体もマーケットの学校参加者の方が「寒そうだから聞いてみるよ」とガス屋さんに問い合わせて設置が実現したそう。偶然の縁やつながりの中で場が出来ていくマーケットの学校の面白さが感じられました。
ガスストーブの周りに集っていた北本チームも多くの立ち話をすることが出来ました。
お客さん「そうかリノベーションまちづくりのSNSを見て子供と一緒に遊びに来ました、こういうの楽しいですよね」
地元の方「再開発で便利になったけど、ちょっと寂しくもなっちゃたからね。便利をとるか楽しさをとるか、難しいよねー」
出店者の方「地元のお店も参加してくれて嬉しい。近くの喫茶店の人も特別メニューを出してくれていて、喜んでくれてるみたい」
などなど、北本市と草加市のまちの状況は違えど、普段そこに暮らしている人たちが小さなニーズを持ち寄って集まることができる場としてマーケットが機能していることがお話からも伺えました。このように、初めて会った人から立ち話の中で色々伺える雑談のコミュニケーション自体がマーケットの面白さを象徴しているようです。
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テーマを持ったマーケット
話題は変わり、マーケットの学校参加者の岡村さんが北本市役所芝生広場で市との共催という形で昨年10月に開催した「Ethical Sea Market」の話へ。元々自宅を中心に行っていた「Ethical Sea Market」を市役所芝生広場に持ち込み、規模を拡大して開催。普段の&green marketと違い、エシカル消費などテーマ性を強めたマーケットで販売、音楽・ダンス、トークなど多彩なコンテンツが実施されました。
&green marketと「Ethical Sea Market」の両方に出店した参加者さんからは「いつもと同じ場所だけど違う雰囲気で面白かった」という声があがりました。岡村さんはエシカル消費というテーマから、出店者にも来場者にもなるべくつながりが生まれるような運営を意識していたそうで、お互いの名前が分かるようにスタッフ名札を用意したり、交通整理も1時間交代制にし、ボランティアスタッフさんも会場を回って楽しめる時間を作るなど工夫していたそうです。
また今回は隣接する本町公園もサブ会場とし、ダンスやトークなどが行われました。地元自治会にも所属する参加者さんからは、公園の新しい使い方で面白かったという意見が出ましたが、近隣住民の参加が少なかった気がするので事前告知などもう少し地域とも連携できるともっと良くなりそう、という反省点もあがりました。次回は2025年5月に開催予定。これまでよりもターゲットを広げて、家族連れやお子さん向けにも楽しめるものを増やしていきたいと岡村さんは教えてくれました。
普段行っている&green marketでは、特別なテーマを設けないことで誰でも参加できる出店の気軽さを重視していますが、テーマを設定することでまた違った可能性が生まれるのもマーケットの面白さといえます。
マーケットとフィールドの関係、焚き火の可能性
後半は参加者さんから出た「子供達が自然に触れるきっかけ作りがしたい」という意見をきっかけに、マーケットと周辺環境(フィールド)との関係の話に。マーケットの中で自然学習が出来るクイズなども開催したいが、出張して田んぼの生き物観察会なども開催してみたいという意見が出ると、参加している農家さんからは是非うちでも開催を！と話が盛り上がりました。
&green marketを拡大する形で毎年3月に行われている「みどりとまつり」という大規模マーケットでは、毎年地元農家さんのご協力で畑からネギを抜き、その場で焼いて食べるネギ焼きブースが好評です。＆green market にも毎回のように焚き火を行っている&greenラボブースがあり、旬の野菜や北本猟友会さんとのコラボで行うジビエの会など、北本のフィールドやマーケットに関わる人から集まった季節の美味しいものがシェアされる場になっています。
マーケットをきっかけにフィールドに出て行ったり、フィールドから美味しいものが持ち込まれたり、マーケットとフィールドの関係が繋がっていくことには、とても可能性がありそうです。
また＆green marketに参加したある出店者さんは、さつまいもの販売時にアルミホイルも一緒に渡して「ラボに持っていけば焼けますよ」と案内するなど、ラボの焚き火を活用して集客を工夫したり、新しいマーケットの楽しみ方を提案してくれていました。継続的に出店していく中で、ラボの活動や焚き火を使いこなそうという発想が出店者さんにも広がっていく面白い流れが生まれています。
得意なことを持ち寄る場所
マーケットは売り買いを中心とした場所ですが、ラボの焚き火のようにシェアしたいものことが集まってくる場所でもあります。&green marketにも販売以外の形、展示や発表などで出店を希望する人は増えてきています。2023年に北本市役所ホールで開催された「まちびらき」は参加者それぞれから見た北本の良さを展示する場でした。北本の土で焼いた土器、北本で撮影された野鳥の写真展、北本に拠点を持つNPO法人 さいたま山に親しむ会の方をお呼びしてのトーク、北本市史に残っている麦打ち歌の再現など、十人十色の多様な視点から、北本の面白さが展示されました。
市長公室の千葉さんは「参加者それぞれのこだわりが強く、今まで知らなかった北本の魅力を知る面白い企画だった」と話します。参加者もそれぞれ楽しそうにお互いの展示を見合っていたのが印象的でした。フィールドで活動した成果を市役所に持ち寄るという意味では「まちびらき」もマーケットも似ているところがあります。
話の流れから、次回のまちびらきに参加したい「ジオラマおじさん」がいるという話題が出ると、街には他にも様々な「こだわりおじさん」がいるという話で盛り上がりました。「昆虫標本おじさん」、「木工おじさん」、「発表したいおじさん」など。
考えてみると&green marketや他マーケットでも出店者は圧倒的に女性が多く、世の中のおじさんは中々得意なことを持ち寄って披露する場所が無いのかもしれない、という話に。勿論おじさんに限らない、年齢性別を問わない話ですが、得意なことを持ち寄って話し合う場所を求めている人は意外と多いのかもしれません。売り買いが発生しなくてもこだわりを発表して話せる場所があること、そういう1日を一緒に作ることが出来ること。そこには喜びがあるし、発見もあるはず。マーケットや芝生広場の活用には、そんな可能性もありそうです。
例えば映画を観ることは一人でも出来ますが、観た後にその映画について話し合える場所は意外と少ないのかもしれません。得意なことや一つのテーマについて、そこまで大袈裟でなく気軽な立場で雑談のように話し合える時間や関係性が、マーケットの中にはたくさんあります。シンプルな売り買いを超えた”こだわり”や”思い入れ”を交換し合う場所。仮設で1日限りだからこそ、色々なテーマで場を作ることも出来るし、関係が重たくなりにくい。そんな場所が近所に増えると暮らしがもっと楽しくなる気がします。
