そのぷっくりとした可愛らしいフォルムが特徴の多肉植物たち。サボテンやアガベなどが有名ですが、インテリアの一つとしてお部屋で育てている方も多いのではないでしょうか。その種類の多さや育てやすさも相まって、“多肉女子”という言葉も生まれるほど。近年では専門店も続々とオープンし、希少な多肉植物を栽培・販売する植物作家も多く活動しています。

今回は北本団地に生まれた植物と陶芸のお店『〇✕▢(エンバイボックス)』をご紹介します。お気に入りの多肉植物にあわせる、あなただけの植木鉢を自分で作れるお店です。

個性的な店舗が並ぶ団地商店街

北本団地は埼玉県北本市にある大型団地です。団地の中心部にはアーケード商店街があり、ジャズ喫茶・アトリエ・弁当屋・ダンススタジオなど、約10店が営業を行っています。個性的な店舗がそろう商店街の一角。楽しそうな笑い声に誘われてお店の中に入ってみると、和やかな雰囲気の中で陶芸体験が開催されていました。

「まずは土を丸めましょう。丸いボールが出来たら土台に置いて、親指で上のところをグイッと押していきます。わからないことがあったらどんどん聞いてくださいね」先生が実際にお手本を見せたら陶芸体験のスタート。参加者は各々自分の造りたいものをイメージしながら、体験は進んでいきます。お皿や湯呑、マグカップなど子どもたちも一緒に夢中になって取り組みます。

団地で開かれる陶芸教室

陶芸工房を併設した植物店『〇✕▢(エンバイボックス)』は、陶芸家のセキグチタカヒトさんが代表を務めるアトリエショップです。2階建て店舗の1階では植木鉢を中心とした陶芸作品の販売や、サボテンなどの多肉植物を販売。2階ではカメラマン“ナガシマアサコ”さんが主宰するハウススタジオ『うえのへや写真館』が営業しています。また、1階店舗ではセキグチさんによる陶芸体験教室も開催されています。

初心者からプロコースまで

〇✕▢(エンバイボックス)で体験できる陶芸教室は3コース。初めての方から中上級者の方まで、ご希望に応じたメニューが用意されています。初級コースは所要時間が約30分とお手軽に体験でき、子どもでも飽きずに一緒に体験できるのが嬉しいポイント。陶芸や植物好きな大人の体験コースはもちろん、子どもの陶芸体験に多くの方が訪れています。

制作した器や植木鉢は、店舗裏側にある陶芸窯にて焼き上げられ完成となります。店舗に伺いセキグチさんから手渡されるあなただけの器や植木鉢。日々の暮らしに新たな彩りを添える宝物が出来上がります。

様々な技法を駆使して作られる植木鉢

陶芸家セキグチタカヒトさんは、埼玉県深谷市の出身。東京芸術大学大学院を修了後、大学での助手などを経て、現在では植木鉢と酒器を中心に陶芸活動を行っています。2023年には北本団地に〇✕▢(エンバイボックス)を、友人の植物作家mio’s farmさんと共にオープンしました。陶芸だけでなく、自身も多肉植物の栽培を手掛けるなど、他方面にわたり活動を行っています。ふるさと納税返礼品にも出品しており、大学の研究員として自身が留学されていたアメリカでの作陶活動や、縄文土器から着想を得た焼成方法など、実験的で新たな技法に挑戦した植木鉢や酒器を製作されています。

特殊焼成で造り上げる植木鉢(北本市ふるさと納税/ふるさとチョイス)        

縁を掛け合わせる場所

「北本団地へは、団地商店街で作家仲間がお店をオープンしたのをきっかけに初めて訪れました。団地の雰囲気も好きですし、団地商店街の新たな可能性を感じてお店を開くことを決めました」セキグチさんが〇✕▢(エンバイボックス)を開店したのは2023年6月のこと。『縁を掛け合わせる場所』をコンセプトに仲間集めや資金調達に奔走し、店舗オープンへと至りました。「僕自身も様々な縁に恵まれて陶芸家として活動を行っています。陶芸教室でもお客さんとおしゃべりしながら一緒に色々な器や鉢をつくっていくのですが、リピーターになってくれるお客さんも多く、とても嬉しいです」とセキグチさん。

想いを胸にバショに集う

〇✕▢(エンバイボックス)のオープンに際し、大切にしたい想いやコンセプトを、セキグチさんは次のような言葉で書き記しています。

〇✕▢と書いてエンバイボックスと読みます。縁(〇)を掛け合わせる(✕)場所(▢)というコンセプトで命名しました。陶芸教室でもあり園芸店でもあり何でもない箱のエンバイボックスは、一般的な販売店とは違い「買いたい人」「売りたい人」「知りたい人」「出会いたい人」たちの縁を掛け合わせ楽しみを広げることを1番の目標に運営しています。「何でもない箱」というのは「販売店」ではなく、不定期に多種多様なワークショップを行ったり、縁から生まれたイベントや企画を行いまた縁が広がる「フリースペース」としての側面もあります。僕自身今後どんな縁が生まれるかは分かりませんが、コンセプトを軸に人が多く集まる場所を目指して運営していきます。

クラウドファンディングにも挑戦

オープンにあたっては、北本市と共同で実施する『ふるさと納税型クラウドファンディング』にも挑戦しました。「初めてのことばかりで大変でしたが、とても多くの方から寄附を頂き目標を達成することができました。こんなに多くの仲間が応援してくれるんだ!と嬉しかったです」とセキグチさんはオープン当初を振り返ります。クラウドファンディングでは200万円以上の寄附を集め、その後も定期的に体験会や植物相談会を開催するなど、商店街のコミュニティスペースとしても活動を行っています。

北本団地商店街で一緒に学び教え合う「コミュニティ工房&シェアスタジオ」をつくりたい(北本市ふるさと納税型クラウドファンディング)

 

大学で長年講師も務めるセキグチタカヒトさん。〇✕▢(エンバイボックス)でこれから実現したい夢や活動についても話してくれました。「僕は長いこと学生に美術を教える仕事をやってきました。卒業生が全国にいるので、アーティストの卵が北本団地で色々なことに挑戦出来たら、とても素敵なことだと思っています。団地に部屋も沢山ありますしね。あと、実は鴻巣市や吉見町など北本周辺は、有名な植物作家さんやこだわりの植物店がたくさんある植物のメッカなんです。今後はお店を使って、植物の即売会やイベントなど、色々なことに挑戦していきたいです」

〇✕▢(エンバイボックス)を会場に、最近では商店街の居酒屋さんとの連携企画として、植物好きが集まりお酒を飲みながら種を植えたり、好きな植物についておしゃべりをする会も開催されています。“縁を掛け合わせ楽しみを広げること”〇✕▢(エンバイボックス)を舞台に自らが懸け橋となり、様々な縁をつないでいく。セキグチタカヒトさんが目指すゆるやかな場づくりへの挑戦は、これからも続いていきます。

陶芸家 セキグチタカヒト(関口貴仁) Instagram

2006年 東京芸術大学工芸科卒業
2008年 同大学大学院陶芸専攻修了/同大学陶芸科教育研究助手
2011年 タコマコミュニティカレッジ(アメリカ/ワシントン州)に研究員として在籍
2018年 東京工科大学デザイン科講師(現職)
その他陶芸教室の講師多数。2023年から〇✕▢(エンバイボックス)運営の他、益子陶器市などのイベント出店や注文販売を中心に活動を行う。

〇✕▢(エンバイボックス) Instagram/WEB

住所:北本市栄7-1-25-102 北本団地商店街/営業:土曜日・日曜日13:00~18:00/駐車場:有
※店舗詳細やイベント情報は公式Instagramをご確認下さい。