江戸時代から続くサツマイモ栽培
北本市でのサツマイモ栽培の歴史は古く、その歴史は江戸時代にさかのぼります。特に荒川のある西部の高台で盛んでした。当時のことを知る方によると、北本で採れたサツマイモが、舟運で川越まで出荷されていたそうです。水はけがよく高台の畑を好むサツマイモは、北本西部の畑と相性がよく、昔はお芋の畑が一面に広がっていたそうです。
北本の名産「サツマイモ」を、現在でも栽培しているのが、北本市の西側地域で農業を営む「B.T.FARM」です。代表の加藤学さんがB.T.FARMを設立したのは2018年のこと。サラリーマンから、地元である北本で農業法人を立ち上げ、北本のビニールハウスでアボカド栽培を筆頭に、トマトや露地野菜の栽培に取り組んでいます。適地適作をモットーに、安心安全な野菜作りにこだわる加藤さんが、就農時から注目していたのが「サツマイモ」でした。
「私たちがお借りしてサツマイモを栽培している畑の多くは、昔からサツマイモをつくっていた畑でした。植えてからは、ほとんど手をかけていませんが、大きなお芋がゴロゴロ採れています。品種は9割が「紅はるか」という、甘さとしっとりした食感が特徴のお芋です。野菜は土や環境が合う場所で育ててあげると、味が美味しいだけでなく、消毒などを極力しなくて済みます。北本の土壌は火山培土で水はけがよく、サツマイモを育てるのに最適なんです」
新たなチャレンジ
今年からサツマイモ栽培を本格的にスタートした加藤さんですが、もう一つ新たにチャレンジしていることがあります。それは“多機能型事業所くじら雲”との連携です。くじら雲は北本市にある事業所で、障害のある人が日中過ごして働く居場所です。B.T.FARMでは、2022年の2月から障害を持った方と一緒に様々な畑作業に一緒に取り組んでおり、サツマイモ栽培もその一つ。
※「多機能型事業所くじら雲」についてはこちらの記事もご覧ください。
「週に4回、午前中の時間に3・4人が来てくれています。サツマイモは苗の植え付けから収穫まで、その他の野菜は種まきなど、その時々の作業を一緒にやっています。農業って機械じゃなく手でしかできないことってたくさんあるんです。いままでやりかったけれど、自分一人ではできなかったことを、くじら雲の皆が来てくれて出来るようになりました。本当に助かっています」
一緒に育てる喜びを
くじら雲の皆さんと一緒に作業をする中で、気付いたことがあると加藤さんは言います。
「皆がね、とにかく楽しそうなんです。農業って孤独で一人でもくもくと働くだけになっちゃうから。でも皆がいると楽しそうで笑いも多いんですよ。そういうの見ていると、僕も嬉しいんですよね。なんか一緒にやっていて、自分もやりがいをもらっているなって感じます」
「農福連携」という言葉に表現される、農業と福祉の連携ですが、実際に実践されている事例は少ない様に感じます。今回のチャレンジがスタートしたきっかけと、工夫されているポイントについてお聞きしました。
「昨年市内の福祉施設のメンバーさんと一緒にお試しで、サツマイモの収穫体験を開催しました。その時に、くじら雲の所長さんにお会いして、そこからお付き合いが始まりました。ずっと同じ作業は面白くないので、飽きないように違う作業を組み合わせながら、面白がってもらえるように工夫をしています。メンバーの子の、得意不得意があるのでこの子が来たらこれやってもらおうかなとか。種まきとか細かいのが不得意な子は力作業やってもらおうかなとか、スタッフの方と一緒に考えています。夏の時期に体調を崩して休んでいた子が、今涼しくなってまた来てくれたりすると嬉しいですね」
その子に向き合っていく
メンバーとの共同作業が長く続けられるように、それぞれの個性に合わせた作業を、出来るだけ考えていきたいという加藤さん。その想いの根底にあるのは、自身も感じている農業の魅力だと言います。
「農業の魅力は、作って売るお金という面だけじゃなくて、誰かに喜んでもらったり、地域の魅力になっていくことだと思います。夏の暑さとか外での作業がきつい子も正直いるんですけど、可能な範囲でくじら雲のメンバーには、農業を楽しんで欲しいです。楽しそうに作業をしている子たちを見ると、自分もその魅力に改めて気づかされます。焼き芋を今年から始めましたけど、それを一緒に売りに行くとか。これからは加工品も一緒にやれたらなって思っています」
作業の合間にメンバーの皆さんは、適宜お茶休憩に入っていきます。「加藤さんお茶いってくるね!」明るく加藤さんに声をかけて、横を通り過ぎるメンバーの皆さん。取材した日もコンテナ山盛りに、自慢のサツマイモが積みあがっていきます。
焼き芋&野菜直売所をオープン
B.T.FARMの加藤さんが力を入れているのが、農園に併設された直売所での自社農園野菜の販売です。直売所は2022年にオープンしたばかりですが、夏はトマト・冬はさつまいもと、季節のお野菜が並びます。
「野菜は主に問屋さんやスーパーに出荷しているのですが、直接お客さんの顔をみたくて、今年から直売所をオープンしました。さつまいもは熟成すると甘みが増すので、アボカドのハウスで熟成してから焼き芋にしています。焼き芋を頬張るお客さんの笑顔が見えて嬉しいです。」
大人気のお芋ほり
加藤さんは、今年からお芋ほり体験もスタートされました。2022年10月のスタートから多くのお申し込みがあり、特にお子さん連れの方から人気があるそうです。朝採れ野菜のプレゼントも大変人気だそう。(お芋ほりの予約はこちらから。じゃらんWEBサイト)
「お芋が甘くなる熟成はまだまだこれからなのですが、今の時期はほくほくの焼き芋が味わえます。焼き芋の他にも、朝採れ野菜もありますので、ぜひ一度お越しください。」
サツマイモ堀り体験に参加されたお客さんの反応についても聞いてみました。
「皆さんこんな掘れるのって!大人も子供も好きなだけ掘ってもらっています。大人の皆さんは汗かいて、結構疲れて帰りますね(笑)参加の方には規格外のお野菜をプレゼントしています。お客さんは東京など、遠くからの方もいらっしゃいます。実際に地域に来てくれるから、北本の魅力を伝えられたらなって思っています。」
※2022年のサツマイモ堀り体験は11月13日までとなります。また来年お楽しみに。
北本の西部地域で古くからつくられてきた名産の「さつまいも」。現在でも、若手農家のB.T.FARM加藤さんが、良質な大地を舞台に、想いの詰まった自慢のサツマイモを、地域と共に丹精込めて育てています。歴史と挑戦が育むB.T.FARMの北本名産サツマイモをぜひ賞味ください。(暮らしの編集室)
B.T.FARM 野菜直売所
//直売所の営業時間//
月、火、木、金、土
9:00〜16:00
//住所//
埼玉県北本市石戸9丁目167-1(GoogleMap)
駐車場 有り