2021年5月から北本市役所の芝生広場で毎月一回開催されている「&green market」

市内近隣の出店者が集まり、思い思いに芝生で楽しむお客さんで賑わっています。
新しい北本の楽しみ方として定着しつつあるこの「&green market」は「マーケットの学校」という一つのワークショップをきっかけに生まれました。

今回の記事では、講師である鈴木美央さん、江澤勇介さん、事業担当者の北本市市長公室 荒井菜彩季さんに集まっていただき「マーケットの学校」から「&green market」まで、この一年の活動を振り返る座談会を開催しました。

マーケットや地域に興味のある方は必見の内容です。ぜひお楽しみください。

左から、江澤勇介さん、鈴木美央さん、荒井菜彩季さん

 

&green market と マーケットの学校 をつなぐ ラボ

江澤 今年度も「&green market」「マーケットの学校」と一年やって来ました。
長いような短かったような…でも出店者の方やお客さんと毎月のように芝生で顔を合わせるのは楽しかったですね。

荒井 今年は月に一回の「&green market」開催、数回に一度「マーケットの学校」を挟んで振り返り、という流れで進めてきました。ちょっと新型コロナウィルス感染拡大の状況もあって毎月開催は出来なかったのですが、&green marketが7回、マーケットの学校が3回の開催でしたね。皆さん今年を振り返ってみていかがでしょう?

江澤 荒井さんからいきましょう。どうでした?

荒井 私からですか!そうですね、&green marketの現場にいると、皆さんが楽しんでくれている感じが伝わってきて、私自身もワクワクしながら参加できました。特に、昨年のマーケットの学校から参加してくれている人たちを中心に「ラボ」というのをやっているんですけど。

江澤 説明が難しいんですけど「ラボ」は面白いですよね。ちょっと説明します。
「&green market」では、出店と運営の間にあるような「ラボ」というブースを作っています。焚き火をしたり、その火を使って焼きとうもろこし、焼き芋とか、旬の地物野菜を食べられるようにしたりとか。他にも出店者さん向けのまかないを用意するとか、足りない部分を補ったり、小さなニーズに対応して、現場で考えながら応える役割を担っています。基本的には運営や「マーケットの学校」からの参加メンバーが、自分たちが楽しくなるように、マーケットの時間がより良い時間になるようにってやっているんですけど、ラボが中心にあることで全体の空気が良い具合にゆるんでいる感じもあります。

 

荒井 説明ありがとうございます、そうなんですよね。「ラボ」の自由な雰囲気が「&green market」全体の空気、北本らしさみたいなものを作っている気がして。今年一年やってきて、ラボ、芝生、音楽が北本のマーケットの特徴的な魅力なんじゃないかと感じました。焚き火とか旬の農産物がつながりのきっかけになっているんですよね。

江澤 確かに「ラボ」が地域やマーケットに関わりたいって人の入り口になっている部分はありますよね。受付とか運営みたいな形は良くあるけど、もう少し現場に踏み出した形で「ラボ」を設置しているマーケットって他では聞いたことがない気がします。顔が見える関係性が生まれるのが良いですよね

荒井 もうひとつ「&green market」だけでなく「マーケットの学校」の振り返りの時間がセットになっているのもすごく良かったです。マーケットを3回くらいやって、1回振り返りの時間がある。マーケットで起こった良いこと悪いこと色々を、みんなで共有して一緒に振り返れるので、動いて考えて話してまた新しく動いていくという連鎖が生まれていました。何か問題があっても連鎖の中でどんどん改善されていくので、すごく大事なんだなって感じました。来年もその連鎖や循環を大事に進めたいなと思ってます。

江澤 素晴らしいまとめですね、これで終わってもいいくらいかも。。。笑
ちょうど市長公室の林さん(荒井さんの上司)もいるので、聞いてみましょう。林さんはいかがですか?

林さん(市長公室) ほんとに綺麗なまとめでしたね。ほぼ荒井さんと同意見です。笑
付け足すなら、コロナ禍の状況でもマーケットを続けられたことはすごく良かったと思っています。何回か中止になってしまってはいるんですけど、どんな状況でも地域に根付いた活動が出来るというのはとても大事なので。お客さんの中にも、マーケットがあるから引っ越してきたって人がいたりとかして。続けた分、定着してきたのかなという実感があります。

江澤 規模が小さいからこそ、どんな状況でも続けられるという強みはありますよね。地域に根付いた小さな活動ならではの可能性がある。

迷う時間を積み重ね新しい「近所」が出来上がっていく

江澤 「マーケットの学校」を始める前の告知文に【「自分たちで楽しい時間を作り出す日常」を営むこと、その積み重ねが地域の価値を生み出す】みたいな言葉があったんですけど、今年はそれをしっかり形に出来たかなという気がしています。「ラボ」を中心に、自分たちで考えながら楽しんでくれるメンバーが集まってきていますよね。この流れを積み重ねていくことで、地域に今までなかった価値が生まれるんじゃないかなと。

荒井 本当その通りですよね。

江澤 「&green market」を通して名前は知らないけど顔は知っている「近所の人」が増えているんですよね。その人たちと、月に一回芝生に集まって焚き火しているような感じがあって、年齢も性別もバラバラだけど集まってきて一緒にいる感じが面白いんです。もしかしたらすごく当たり前のことを言っているかもしれないんですが、でも今まで僕の生活には無かった「近所」の感じで、居心地が良いんです。この「近所」が新しく出来上がっていく感じこそが地域の価値なんじゃないかなって思いましたね。

荒井 「マーケットの学校」から継続して「&green market」に参加してくれているメンバーは本当にちょっと親戚みたいな感じもありますよね。毎月会うから親戚より会っているかもしれないくらい、関係が積み重なっています。そしてマーケットをより良い場所にしようと、みんな一緒になって真剣に考えてくれている。すごくありがたく感じています。

江澤 そうなんですよね。みんな真剣に、しかも楽しみながら参加してくれている。その価値をもう少し大事にしたいですよね。今まで無かった「近所」が出来上がる、「近所」で楽しめるって、小さくてもすごく大きなことなんじゃないかと思います。

荒井 美央さんは今年いかがでしたか、良かったこと、感想など教えてください。

鈴木 「&green market」は、すごく良いですよね。
何が良かったかって言うのはここまで出たみんなの話の通りで、きっと関わった人達はみんな、その良さを共有できているんじゃないかなと思います。私は、なんでその良さが実現出来たのかってことを考えてみたんですけど、理由が二つあって、

一つは「迷う時間を認めた」ことが大きかったんじゃないかと思います。結論ありきでない考え方で現場に呼応するように色々を進めてきたことが「ラボ」の活動や芝生の余白を生かす全体の雰囲気につながったのかなと。

もう一つは「生産性を高めることを目指さなかった」のが良かった。ラボも音楽も芝生も分かりやすく生産性を高めるための活動ではないんだけど、それがある事によって、マーケット全体の居心地が良くなっている。幸福度が高まっているのかなと感じました。

江澤 確かに僕ら運営も慣れない事だらけで試行錯誤しながら進めて来ました。だけど迷い考えるプロセスを経たからこそつながったこともたくさんありますね。全然うまくできないし完璧に出来ないけど、頑張ってやってきた。

鈴木 全部完璧じゃなくたって良いんですよね。やってみなきゃわからないことの方が多いから、やりながら改善していけばいい。そして、そういう進め方が可能になっていたのは行政側との信頼関係がしっかり構築されていたからというのが大きい。荒井さん、林さんはもちろん、課長まで様子を見にきてマーケットに感動してくれてたりして。そういう信頼関係があったから、安心感を持って現場が動いていたのだろうと思います。

江澤 そうですねー、信頼関係の中で見守られてるからこそ、安心してトライアンドエラーができた。一緒に考えてこれたなって感じはあります。

鈴木 他の地域でも「マーケットの学校」良いですよね、うちでもやりたいって言われるんですけど、みんな本当に見守れるの?そういう覚悟があるの?って思いますもんね。大変なことはたくさんあると思うんですけど、北本はそこの信頼関係がしっかりしているのがすごく良いですよね。

江澤 前例がないことをやっているので、あの先行事例みたいにしてください。って縛りがなかったのも良かったです。現場で起こったことに対応することで形が出来てきました。今年一年である程度形は出来てきたので、ここからはどうやってキープするかをしっかり考える段階かなと思います。仕組みも作っていかないと。

荒井 北本市としてもそこを考えていきたいと思っています。

まちに拡がっていくマーケットの可能性

鈴木 来年どういうふうに進めていくとか決まってるんでしたっけ?

江澤 ここまで話してきたような「&green market」で生まれた価値を大事にしながら、市役所芝生広場と連動して何か出来る場所を探したり試したりしたいですね。まちにジワジワと「&green market」が拡がっていくようなイメージですかね。

荒井 出店者さんもお客さんも一緒に芝生の使い方を積み重ねてきた気がするので、皆さんのつながりやこだわりを大事にしながらやりたいですね。

鈴木 いいですね。場所に馴染んでいく感覚ってすごい大事なんですよ。マーケットは個の集合だっていつも言っているんですけど、それは個と場所が関係性を結んでいく場だということでもあります。それぞれがマーケットでやりたいことを形にして、場所の使い方、ノウハウを獲得していく場。

荒井 「ラボ」の焚き火でも、棒巻きパンを焼くワークショップをやっていたら、これ焼いても良いですか?ってサツマイモを持ち込んでくれたお客さんがいました。「&green market」の楽しみ方を凄く理解してもらえている感じで嬉しかったです。

江澤 5月にマーケットやったとき、芝生はちょっと寂しい感じだったのが、10月のマーケットは持ち込みのレジャーシートでわいわい賑わっていました。運営者、出店者だけでなく、お客さんもそれぞれ場所の楽しみ方を獲得してくれていますよね。

鈴木 それぞれがそれぞれに場所との関係性を構築しながら、同時に場を共有してきたんですよね。それはとても大事なことだと思うので、ぜひその流れをぶつ切りにせず、まちに「&green market」と「マーケットの学校」を拡げていってくれたら、もっと面白くなりそうです。

荒井 この一年で、キッチンカーの方々がチームを組んで西口の駅前広場に出店するようになっていたり、自宅前で数店のお店を集めてマーケットを開催する人もいたりして、市内にマーケットも増えているんですよね。その流れも面白いなと思っていて。

江澤 そうそう、既に活動している人たちもいるんですよね。「&green market」の影響で増えているわけじゃないかもしれないけど、市内で同時多発的に起こっているのは凄く面白いので、そこをつないでいく「マーケットの学校」というのもやりたいですね。

荒井 「&green market」「マーケットの学校」を通して、人と一緒にいること、場を共有することについて考え話す時間が増えました。マーケットの中だけでなく普段の暮らしや仕事にもその影響は出ていると思います。関わったり話したりするだけでも面白いんです。だからコロナ禍でマーケットが出来ないと、寂しくなります。それくらい楽しい時間でした。「近所の人」が増えて、北本のまちで暮らすのが楽しくなる「マーケットの学校」は来年度も開催していく予定ですので、ぜひ北本市内外問わず多くの皆さんに参加していただきたいです!

 

 

この後も話は尽きず、関係あることもないことも含みながら座談会は続きました。
「マーケットの学校」はマーケットのことだけを考える場所ではなく、それを通して暮らしの全部を考えるような場になっています。
地域に関わる入り口でもあるし、学んだことを発表する舞台にもなる。やりたいことにチャレンジできるみんなの場所です。
興味のある方はぜひお気軽に参加してみてください。