2023年度の「マーケットの学校」は北本市役所芝生広場を飛び出し、北本団地商店街を舞台に開催されました。この記事では1年を振り返って、講義の様子や実践編で行われたクリスマスマーケット、今後の「マーケットの学校」の可能性など、様々な寄り道をしつつざっくばらんに語り尽くした座談会の模様をお届けします。参加者は「マーケットの学校」講師の暮らしの編集室 江澤さん、岡野さん、北本団地商店街で「中庭」を運営しているカナコさん、事業担当者の北本市市長公室 千葉さん、木村さんです。4年目を迎えた「マーケットの学校」の現場から、リアルな声をお届けします。

現場と対話を繰り返す マーケットの学校

千葉 今年初めて「マーケットの学校」を担当することになり、とても不安でした。事前に冊子を読んだりしてこれまでの経緯は追っていたんですけど直接体験していなかったので、それこそ人が来てくれるのかなとか。始まってみたら結構参加してくれる人も多くて良かったです。

江澤 確かに、いつも言うんでけすど「マーケットの学校」って何をやっているのか、とても分かりづらいですよね。

千葉 何やってるの?とか、参加するとマーケットに出れるようになるの?など、実際に参加したことがない人からは市役所内でも未だに聞かれたりします。

江澤 とても説明しづらいんですけど、端的にいうと、現場で起こることを共有してそれをまた話し合って【現場と対話を繰り返す】ということをやっているんですよね。まだ分かりづらいですね。笑

「マーケットの学校」ではみんなでやりたいことを持ち寄って、どうしたら楽しくなるか話し合う。実際にマーケットをやって試してみる(実践編、&green marketなど)、やってみた結果それぞれが思ったことをまた「マーケットの学校」に持ち寄って話し合う。その繰り返しをやっているんです。

それだけ聞くと何でもない普通のことな気もするし、実際そうなんですけど、今ってあんまりみんなで話し合って何かを決められる場所が少ない気もするんですよね。仕事でも遊びでも、地域でも行政でも、最初から決まってるところに参加するとか、既に決まっているルールに従うことの方が多いと思うんです。

「マーケットの学校」は、そのルールから一緒に考えて作っていきましょうということで、自分たちでルールを作ってやってみる、その中で感じたことを元に、少しづつ修正していくという感じで進むんです。マーケットで場所を使いこなしていくと自分たちの場所って実感が生まれて愛着が育つし、そこで感じた意見を持ち寄って話し合いながら、マーケットをより楽しい場所に改善していくことができる。場の運営に関われる実感があると、より一層愛着が湧いて責任感もやりがいも生まれていくと思うんです。

そういう【現場と対話を繰り返す】サイクルの中で、行政とまちの人が一緒になって考えながらマーケットを作っていく、ということをやっています。こう書くと堅苦しいけど、楽しいですよね。

千葉 2023年度の「マーケットの学校」は前年度までの会場だった市役所芝生広場を飛び出して、北本団地商店街で行われました。今年参加してくれた人たちもとても楽しそうでしたし、実践編ではいくつも面白いことが起こっていましたね。

江澤 講座は何回やったんでしたっけ。ちょっと時間が経っちゃったんで記憶が曖昧ですけど。。

千葉 講座は3回やりました。その後、実践編として実際にマーケットを1回開催、合間にオンラインで何回かミーティングもしています。講義の初回は参加者の方に自己紹介をいただいて参加理由など色々お話を聞ききました。少し商店街も観て回りましたね。2回目は皆さんに団地のイメージを聞かせてもらいました。どんな場所だと思うとか、こんなのあったら良いなとか。昔住んでいた団地の写真を持って来てくれた人もいました。3回目は自治会事務所にお邪魔して昔の写真や自治会だよりを見せてもらったり、実際に団地の中を歩き回ってみたりしました。

江澤 聞いてたら思い出して来ました。振り返ってみると、具体的にマーケットの話をしている時間は少ないのかもしれませんね。でも実際何をやったかよりも、何回やったかの方が大事だという実感もありますよね、参加者の人と団地でどれくらいの時間を過ごせたかということが重要だと思います。

木村 同じ場所に集まって話したり歩いたり、そこに集う理由があって時間を共有するのが大事なんですかね。

江澤 そう思いますね。地域とか暮らしの中に流れてる時間って起こったこと話したことを一字一句違わずに覚えていることだけが重要なわけじゃない。内容が朧げでも経験が積み重なっていくので、あの人あんなこと言ってたなという記憶は出来上がっていくじゃないですか。そういう実感の中で雑談するようになって、一緒にマーケットを作ってみようという関係性が出来上がっていくんだと思います。逆にその実感とか関係性がないと何にも作れないというか。だから、出来れば3回じゃなくもっとやれたら良かったかも、とは思います。

千葉 今回は北本団地での開催ということもあり、団地にお住まいの方や普段から団地商店街で活動している方々も参加してくれていました。

江澤 そうでしたね、僕ら暮らしの編集室が団地商店街でいくつかのお店に関わっている(中庭、てと、エンバイボックス、うえのへや写真館)のもあって、そこで活動している人もたくさん参加してくれました。今回の「マーケットの学校」をきっかけに初めて団地に来てくれた人もいれば、普段から団地に住んでたり通ってきて活動してる人もいて、その人たちはいつもの活動+マーケットって感じで広がりがあったと思います。団地に集う理由がたくさんあってそこで色んな雑談が生まれて広がってくれたらそれが一番良いんですよね。色んな理由を持ってる人が一緒に混ざって考えられるのがマーケットの面白さだと思うので、何かのきっかけになってくれたら嬉しいですよね。

千葉 「マーケットの学校」は集って話をしようっていうのと同じくらい、みんなで聞こうって感じがあるのが良いですよね。

カナコ 聞いてくれる存在って大事ですよね。家で一人で考えてるとどんどん思いが強くなっちゃって、言葉だけでバーっと意見だけ言うみたいになっちゃうことがあると思うんだけど、「マーケットの学校」は、みんなと話す聞くっていう関係があるから、目の前に聞いてくれる人がいると、対話が柔らかくなっていく感じがありました。

江澤 その話は結構重要だと思ってて、例えば市役所って普段は窓口を設置して意見の聞き取りをするみたいなことが多いと思うんですけど、話す人、聞く人が固定化される窓口みたいな対話では拾えない意見があるってことなんじゃないかと思うんです。

今回は一緒に団地を歩いて自治会の人に会いにいくような時間の中で雑談できる関係性が生まれて、話す側も聞く側も良い状態でコミュニケーション出来るようになった。地域にいると言葉や意味よりも現実の方が強いから、会った時間の量を積み重ねていくような関係が大切なんです。「マーケットの学校」では市の職員さんも参加者の方たちもそういう体験を通して現実を共有できるのが面白いし、市民協働とかを考えるときにもすごく可能性がありますよね。

千葉 最後に実践編として開催したクリスマスマーケットでも「マーケットの学校」参加者の方々がお手伝いや出店でそれぞれ活躍してくれて、最初の講義の時からは想像できないくらいでした。

江澤 やっぱり参加者の人たちはお客さんって感じとも違って、進んで色んな役をやってくれたり、楽しんでくれてましたね。一緒にマーケットの場をキープしようとするチームっぽい感じが出来ていたと思います。

カナコ 最初の講義の時とだいぶ印象が変わりましたよね。みんな柔らかくなった。すごい盛り上がりでみなさん楽しんでくれたみたいで、大変だったと思うけど、良かった。

江澤 それぞれのやり方で楽しんだりチャレンジしてくれていましたね。マーケットはやっぱり仮設で一時的なものなので「えーい、やってみよ!」って気軽に試せるのが良いんですよね。まずやってみて、あとは継続していく中で考えていけばいいって感じで。でも普通に暮らしてるとやりながら考えて作るっていう現場があまり無い気もするので、「マーケットの学校」で地域にそういう現場を作り出すのはすごく重要なんだと思います。今回は団地に住んでいる方にも出店してみませんか?というチラシを配って、実際何組か参加してくれました。

マーケットが日常の関係性を柔らかくする

カナコ そうそう、マーケットに出店していた団地在住の絵を描いてる人が、マーケット終わった後によく中庭に来てくれるようになって。

木村 マーケットの後にもつながっているというお話は嬉しいですね。

カナコ 呉汁を出店していた農家さんを当日飛び入りでお手伝いしてた人たちがいたんですけど、彼らはいつも団地に溜まってる人達なんです。普段は中庭とは付かず離れずって距離感だったんだけど、マーケット以降は距離が近くなって、対応が柔らかくなりました。ひとつ関わると日常の関係性が全然変わるんだなって。お祭りとかで顔合わせたりするのも地域で重要な役割があったんだろうなと思いました。

江澤 やっぱり日常の1対1の関係だけだと、ある意味密室のようなものでしんどいこともあるし、繰り返しの中で閉じていっちゃうと思うんですけど、マーケットみたいに色んな人が入って混ざることで新しい面が見えて、日常の関係性も変化していくんですよね。地域のお祭りも昔からそういうコミュニケーションの場になっていたんだと思います。高齢化とか色々な理由で担い手が減ってお祭り自体も減ってきていると思うので、マーケットのように中の人も外の人も気軽に入ってこられるような現場を用意するのは、地域で活動する人を増やすきっかけとしても必要なことなんじゃないかと思います。

江澤 今回は開催案内のチラシも団地内に全戸配布したので、団地にお住まいの方がふらっとマーケットに立ち寄ってくれたことも多かったように思います。

千葉 マーケット内でやっていた焚き火にも通りがかりの方とかが気軽に入って来てくれていました。マーケットだと人が沢山いるから、入っても良いのかなと思える気がします。

木村 前年までの北本市役所芝生広場での「マーケットの学校」や &green market とも雰囲気が違いましたよね。私は市役所に入る前は &green market の焚き火ってちょっと立ち寄りづらい雰囲気があったんです、誰かの場所というか、焚き火に当たってる人たちはみんな知り合いなんだろうけど、私だけ知り合いがいないんだろうなって気まずさを感じる部分もあって。

江澤 &green market は、そうならないようになるべく気をつけてはいるんですけど、なんだかんだ3年も継続しているので、内輪っぽい感じに見えちゃう部分もあるのかもしれないですね。

木村 ちょっとそういう入りづらい感じがあったんですけど、団地のマーケットは団地の人なら気軽に入ってこれるような雰囲気があったのかなと。開かれた感じがあったので、団地に住んでいない私でも入りやすかったように思います。

江澤 それは団地ならではの部分もあるかもしれませんね。北本団地は2,000戸以上の賃貸住宅で出来上がっていて、出来上がって50年以上経っています。その間、常に引っ越し等で人の出入りがあったと思うので、団地という閉じた空間でありながら常に新しい人が出入りし続ける場所でもあった。僕もこの北本団地出身なので分かりますが、団地の中でやっていることなら顔出してみようかなという雰囲気は、住んでいる人たちには共有されていた気がします。

岡野 市役所みたいなフラットな場所じゃなく、生活空間である団地の商店街でやったというのは大きかったんじゃないかと思います。

江澤 そうですね、商店街、今はシャッター街になっちゃってますけど、かつてはみんな買い物ついでに立ち話していたいわゆる井戸端のような場所ですよね。今回も野菜を買いながら色々話し込んで、ずっと人が溜まってる感じもあったし、元々そういうコミュニケーションの場だったから立ち寄りやすい、留まりやすいというのはあったと思います。

岡野 北本市役所のマーケットでも、&green marketより北本朝市の方が雰囲気が近かったかもしれないですね。行商っぽい感じがあるっていうか。誰かの場所というよりは、ものを買いにくる場所=誰でも入ってこれるという感じ。同じ団地でも商店街ではなく芝生広場を使ってマーケットを開催したら、また違う雰囲気だったのかもしれない。

千葉 確かに、あっちの芝生広場で開催していたら、元々そこでやっている自治会のお祭り「団地祭」のようなイメージに見えたのかな。場所によって雰囲気が変わるのも面白いですね。今回のクリスマスマーケットは商店街っぽい雰囲気で、色々な人が気軽に入りやすかったのかもしれません。

岡野 団地商店街の「ふるさと」さんが出店してくれたのも良かったですね。元々お弁当屋さんなんだけど、最近は仕出しをメインにしていてお店で買える機会が少なくなっていたんです。今回マーケットということで一緒にやりませんかとお声がけして、唐揚げとかおでんを出してくれていました。最近小麦を作る活動もやられてるみたいで自家製チュロスとかも出してくれて、すごい良い雰囲気でした。

江澤 ですねー。クリスマスマーケットの一ヶ月前に「イエローマーケット」って市内外から色んなお店が集まるマーケットをやったんですけど、その時に事前の連絡不足で商店街の方からお叱りをいただくことがあったんです。色々理由はあるんですけど、新しい取り組みで地域を盛り上げるからって、元々そこで活動していた人たちに迷惑をかけて良いってことでは無いわけですよね、当たり前ですけど。それは申し訳なかったなと思っていたんですけど、今回お声がけして一緒にやってもらえて、楽しんでもらえたみたいで、今後も色々やる時に声掛けしやすくなったし、すごく良かったです。

カナコ 商店街の人たちも自治会の人たちも、団地や商店街に思いがあるし、やりたいこともきっとあるんですよね。

江澤 そうだと思います、思いがあるから引っかかることもあるんだと思う。で、今回はそれを乗り越えて一緒になんかやりましょうって関係が出来た。気軽に話が出来るようになったのは個人的にはとても嬉しいんです。向こうからも相談してもらえるようになったりして、やって良かったなと思う部分ですね。

岡野 やっぱり市役所芝生広場と団地商店街で違うのは、元々そこにいる人との関係性をどう結ぶかってところだよね。

江澤 そうですね、暮らしの編集室では北本団地商店街のシャッターを開けて、カナコさんの中庭、まちの工作室 てと、植物と陶芸のエンバイボックス & うえのへや写真館と色々お店を作って来たんでけど、新しい人たちと元からいる人達の関係性をどう作っていくか、やっぱり難しいなと思ってたんです。

千葉 今回のクリスマスマーケットはいいきっかけでしたか?

カナコ さっきの絵描きの人や呉汁を手伝ってた人、今の商店街の話もそうですけど、本当に色んなところが揉みほぐされて、すごくいい感じになったと思います。日常のコミュニケーションが柔らかくなりました。

木村 何かきっかけが一つでもあると変わるんですよねきっと。「マーケットの学校」がそのきっかけになったのなら、とても良かったです。

 

地域の「役」を誰が どう担っていくのか 

江澤 本来はお祭りとか地域活動が、地域の関係性を揉みほぐす役割だったんだと思うんですけど、団地以外の地域でも少子高齢化とか色んな理由でそういう場が減ってきちゃってますよね。地域活動が減る中で、つながりも希薄になって地域の「役」を担う人も減ってきている。それは地域の「役」を担う理由が引き継がれていないのが原因なのではないかと思うんです。

岡野 マーケットだと【焚き火の番をする】みたいに「役」の必要性もそれを担う理由もシンプルで分かりやすいよね。

江澤 そうだね、マーケットは目の前の現実の中で必要な「役」をお願いするので分かりやすいんですけど、日々の暮らしの中では「役」の必要性や理由が見えづらくなっているように思うんですね。

例えば、市役所も名前に「役」って入ってる通り地域の「役」を担う組織だと思うんですけど、合理的な組織運営のために部とか課を分けて組織されていますよね。分業していくことで効率化は進むんだけど、ここからここまでが自分の仕事って線を引かれちゃうことで、全体が見えなくなる面もあると思うんです。義務と権利みたいな話で個人を守る意味ではそれも重要なんですけど、地域の「役」ってそれで切り離せるものだけではない部分があると思うんです。

岡野 マーケットで焚き火をしてると人が集まってきて、焚き火の番を手伝ったり交代したりしながら雑談が始まって、そこから新しいつながりや活動が生まれることが多いんです。今回の団地でも呉汁を手伝うチームが生まれたのは焚き火があったからですよね。それは「役」としては焚き火の番なんだけど、焚き火をキープすることでつながりが生まれて、副次的に地域の関係を揉みほぐす機能も果たしている感じがあるんです。

江澤 よく分かんないけど焚き火をやってたらつながった、みたいな形で、縦横の杓子定規な関係だけでなく、はみ出して斜めにつながっていくようなコミュニケーションの中で関係性が変化していくんですよね。焚き火の番をしていた人自身も変化するし、そこに集まって来た人も変化する。相互の関係性でお互いが変化するんです。この焚き火の番のような「役」が地域にとってはすごく重要で、マーケットの中ではその「役」を担う理由も自然に共有されている感じがあります。別に焚き火じゃなくても良いんだけど、焚き火があるか無いかで、地域のコミュニケーションは全く違うものになる。

放っておくと地域からきっかけが減り無くなっていく中、マーケットでは焚き火のようなきっかけがたくさん共有されていて、その中で斜めの関係が生まれたり、小さな変化がたくさん起こります。それはすごく価値があることだと思うんですけど、市役所のやる事業として考えた時には費用対効果が悪かったり、評価が難しい面もあるんだろうなとも思います。どうやってこれを続けていけるのかなって、難しい部分ですよね。

千葉 お話にある通り、マーケットで起こっている変化って単発で分かるものばかりじゃないんですよね。人によっても受け取り方や満足感が違ったりするんですけど、継続していく中で変化していく関係性というのを、今年度関わってきた中で実感しました。

岡野 地域の「役」を担う人を増やすにも共有できる理由が必要だし、その理由を作ったり共有していくには、やっぱり継続の中で起こる個人の変化、小さな変化が大事なんですよね。どうやったらそういうことを事業として評価したり、継続するための体制を作れるのかなっていうのは悩みどころですね。

小さな変化を測る 矢印の多さと太さ

木村 市役所の事業として考えたときに、数字として目に見えないと説明できない、評価できないというのがあって、そのために熱量を可視化するmGAPという指標を採用しているんですけど、やっぱり個別の変化までは拾えないという歯痒さもあるんですよね。

岡野 もちろん数字にすることも大事だし、続けていくための説得力や説明材料を作っていく重要性は重々分かってはいるんだけど、数字を総量として捉えていくと個別の事例に向かっていけないんですよね。現場にいると、もう少し現実から離れないで積み重ねていける、血肉になっていくような話が出来たらもっと良くなるんじゃないかなと思うところはあります。

最近「マーケットの学校」に参加している人が別のワークショップに参加してくれたり、それ以外の場所で会う機会が増えているんです。地域の人が北本の色んな場所に参加して楽しんでくれるのはとても嬉しいし面白い。これからそこをもっと進めたいと考えています。総量を測るmGAPも重要なんだけど、そうやって地域の人が楽しめるチャンネルが増えること、選択肢の矢印が増えることも重要なんじゃないかなと思っているので。

江澤 そうですね、一人一人の矢印が増えるのと、あと矢印の太さっていうのも重要ですよね。矢印を作ります、矢印ができました、ってところで事業が終わることが多いと思うんですけど、そこで暮らしているっていう継続的な関係性の中では、矢印が太くなっていったり質が変わっていく実感がある。さっきみたいに横展開して色んなことに参加する人が出てきたりとかね。

岡野 そう、それって事業を展開していく側のマネジメントによるところが大きいと思うんです。何も考えてなければ繋がらないことの方が多いしそれが普通だと思うんですけど、北本では今そこが繋がっていくという面白い展開が起きている。それを大事にしたいし、続けていく中で意識的に伸ばしていきたいなと思います。

江澤 確かに事業の組み方とか目標の設定で、その辺が全然変わりますよね。個人の変化、小さな変化を重視して、矢印を増やしたり太くしてつながりを生み出していくような活動をマーケット以外にも増やしていけたら、日常がどんどん面白くなっていくはず。北本で楽しく暮らしている人が増えると良いですよね。それがシティプロモーションの重要なところだと思います。

岡野 そうですね、事業が終わった後も日常にはみ出していくようにどんどん繋がっていくのが良いプロモーション事業だと思うので、自然につながっていくマーケットはやっぱり面白い。シティプロモーションの他の事業も、マーケットを中心に考えていけたら色々上手くいきそうだなと思います。

きっかけを作るマーケットという場所

岡野 団地商店街の日常というところだと、カナコさんの「中庭」の存在も大きいですよね。今回出店していた「なかにわスゥク〜ルゥ」という子供の居場所を作っているチームも普段は「中庭」を中心に日常的に活動しています。他にも社会福祉協議会さんと連動した手話べりかふぇ、人形劇部など、「中庭」では常に様々なものが入り混じって矢印があっちこっちにつながっていて、すごく面白い。今度新しく始まる「満月のおはなし会」とかも、カナコさんはどうやって企画してるんだろうと、いつも感心しています。

カナコ 満月のおはなし会は、持ち込みですよ、団地に住んでる方がやってみたいって言ってくれたので、月に一回満月の日に集まってお話をする会です。やりたいことをやってもらうみたいな感じなんですけどね。

江澤 企画してる方にお話聞いたら「中庭は最先端だと思う」と話してくれました。活動が大きくならなくても、知り合いが一人二人増えて普段の暮らしが楽しくなったら良いなってやってみようと思ったんだけど、それをやってみようって一緒になってやらせてくれるのがすごく嬉しいと話してくれたのが印象的でした。

岡野 その方は北本団地近くの縄文遺跡、デーノタメ遺跡の集まりにも参加してくれていて、やっぱり中庭を中心に、矢印がつながったり入り混じったりしてるんだと思うんです。個人の変化を大切にするって意味でいうと「中庭」はすごいなと思います。

千葉 そういう話を聞くと、自分たちのやっていることに矛盾を感じちゃうところもあります。そこに暮らしている人たちがちょっとでも変化していく、というきっかけを「マーケットの学校」では一緒に作ったり楽しんだり出来ていると思うし、とても大事なことだと思うんですけど、行政だとやっぱりそれなりの規模の中で予算と成果を考えてやっていくことが多いので、個人の小さな変化に関わったり、それを大事にすることが出来ないことが多い気がしてしまって。

江澤 重要なのは多分考え方なんじゃないでしょうか。「マーケットの学校」を通じて今日話してきたような変化が色々起こっていて、きっかけがあると人は変化していくんだなって、千葉さんや木村さんが実感してくれた。その実感を元に考えていけば、それ以外の市役所の業務の中でも繋がりを生み出すことは出来ると思うし、広がる気がするんですよね。もちろん全てを市役所が抱える必要もないし、実感を共有できたまちの人たちも協力してくれると思うし。

岡野 そういう意味でもマーケットは面白いし、色んな人にとっての気づき、きっかけになると思うんですよね。やっぱりシティプロモーションの軸にマーケットを位置付けて考えられたらもっと面白くなっていくと思います。それくらい価値のあることが、起こっていると思う。

江澤 今回の「マーケットの学校」でも、北本市の職員さんも、参加者さんも、団地の人も、URの人も、自治会も、商店会も、みんなが少しずつ入ってきて一緒に考えるようなきっかけが作れたと思います。振り返りのミーティングの中で、参加者さんが今後はああしたいこうしたいって話してくれてたのが印象的で、当然うまくいくことばかりじゃなかったと思うんだけど、続けていく中で考えたいって言ってくれてたんです。つながりが生まれて一緒にやろうって思ってくれた。小さな変化かもしれないけど、やっぱり嬉しいし、そういうものをどんどん繋いでいきたいと思いますね。来年度も北本団地のマーケットは続けていきたいと思っています。

この後も話はあっちに行ったりこっちに行ったり延々と続きました。北本市役所の芝生広場とはまた違う、北本団地商店街ならではの「マーケットの学校」でしたが、来年以降もマーケットは続いていきそうです。商店街だけでも、マーケットだけでもない、両方があることで広がっていく地域の新しい可能性が少し見えた気がします。北本団地商店街や「マーケットの学校」に興味のある方は、ぜひお気軽にご参加ください。