マーケットの学校は、2020年9月にスタートした市民参加型のワークショップです。                        マーケットとは、仮設のお店が集まり日用品や食べ物の売買が行われる、誰でもふらっと立ち寄ることができる場のこと。北本では、定期的に開催されるマーケットとして、市役所芝生広場を会場に「&green market」、北本団地商店街では「団地マーケット」などが開催されています。飲食物や物販の販売だけでなく、弾き語りや作品の展示、こどもが店主になるこどもマーケットも開催されるなど、やってみたい気持ちの背中を押す場としても機能しています。

マーケットの学校では、連続プログラムとして、市役所芝生広場で開催している「&green market」を実践の場とし、対話と実践を往還することで、北本でのマーケットの在り方や暮らしの楽しみ方について考え続けています。

北本市役所の芝生広場で定期的に開催される「&green market」は、市内や近隣から様々な人が集まり出店者もお客さんも一緒になって思い思いに楽しむことができる、北本暮らしの魅力がギュッと詰まったマーケットです。また、最近では芝生広場を会場に、提案者と市が共催してマーケットを開催する連携事業も行われています。(リンク:市役所みどりの広場を活用したマーケットの共催)

キックオフミーティング

2025年9月7日。6年目となる『マーケットの学校2025』初回の講座には13名の参加者が集まりました。&green marketに出店、お手伝いをしている常連さんから初参加の方まで、参加者とマーケットの関わりはさまざま。また、北本市内や近隣市町からの参加者のほかに、今年のマーケットの学校では神奈川県・岐阜県・富山県など、遠方からも数名参加されています。まずは参加者それぞれの自己紹介タイムがスタート。マーケットの学校を主催する北本市の木村さん・講師である江澤さんを交え、参加者それぞれから講座への参加理由や経緯・マーケットとの関わりなどについてお話しいただきました。

ここで今年のマーケットの学校へ参加された皆さんの参加動機を一部抜粋してご紹介します。

・マーケットの学校第1回目から参加しています。コロナ禍の中で始まったマーケットの学校。自分が住んでいる所が楽しい場所になってほしいと思い毎回参加しています。
・手仕事を広めたいと市内を中心に活動しています。9月の&green marketへ出店申込をした際にこの講座を知って参加してみました。
・隣町に住んでいます。畑をやりたくて引っ越してきました。キッチンカーを始めまして販路も広げたいと思っています。
・岐阜県から来ました。マーケットが好きで数年前に鈴木美央さん(マーケットの学校講師)の本に出会った縁で、このマーケットの学校に参加しました。
・富山県から参加しています。公民連携に取組んでおりマーケットも主催しています。
・マーケットの学校第1回目から参加しています。普段は作家として&green marketに参加しながら、ラボブースにも参加しています。
・市内に長いこと住んでいるのですが、子どもたちが大きくなるとあまり市内に出かけなくなってしまいました。『どんな人でも受け入れてくれる』というマーケットの学校の言葉に惹かれて参加しました。今は何ができるかわからないけど、何かできることを見つけていけばいいのではと思っています。
・障がい者施設で支援員をしています。みんなが交流できる場をつくれたらと思い参加しました。
・神奈川県から参加しています。住宅政策の仕事をしており、北本団地への視察でマーケットの学校を知りました。わくわくする場所や、人の営みがもっといきいきとする場所がまちにたくさんあったらいいのにと思い、住んでいる場所の近くでイベント等の企画もしています。仕事も含めて、地域の担い手を皆でつないでいけたらと思っていた時にマーケットの学校冊子に出会いました。
・市外に住んでいましたが、子育てで北本市に戻ってきました。マッサージをやっており、マーケットにも出店したくて参加しました。
・小物などを制作しています。&green marketに出店してみたくて、こちらに参加しました。

マーケットの学校をどこかで見聞きし、普段自身が行っている活動のヒントを探しに来た方、&green marketが入口となり“なにか面白そう”と参加される方など、皆さんの参加動機は様々ですが、マーケットの学校と&green marketが継続してきた時間と取組の積み重ねが、講座に集った皆さんの参加理由から伝わってきます。

ラボブースで起こっていること

参加するメンバーと一緒に雑談形式で話をしながら、各回ごとに様々なトピックを話し合うのが『マーケットの学校』です。自己紹介も終わり、休憩をはさんで後半へと入っていきます。                                        今年のマーケットの学校では特に県外や遠方からの参加が多く、自然と『なんでそんなに遠くから?』との話題に。県外から参加している方にその理由を聞くと、こんな答えが返ってきました。『色々な立場の人が一緒になって話す場って意外と無いんですよね。でも、マーケットの学校にはそんな現場がある気がして参加したんです』

二カ月に一度、北本市役所芝生広場で開催している&green marketでは、毎回ラボブースというブースを運営しています。その日に参加できるメンバーが集まり、焚き火を中心に何か賄いを作ったり、当日出店している農家さんの野菜や猟友会さんに頂いたジビエを焼いたり煮たりしているのですが、このラボブースを&green marketのユニークな取り組みの一つとして挙げる方も多くいます。今回の初回講座でも、自然と話題は“ラボブースのこと”に移っていきます。

・火の番って仕事じゃないけど役割がある。役割がある方が居心地が悪くない。
・売り買いじゃないけど人が寄って来る。大根ステーキ美味しかった。ソーセージや焼き芋を焼きに持ってくる人もいる。猟友会さんも肉を持ってくる。集まった食材でスープとかまかないをつくる。
・一緒に一日過ごす。居場所とか小さいトライ&エラーができる場。
・夏のスイカ割りがおもしろかった。地域のおじいちゃん的振る舞い。色々な要素が関わり合える。
・一緒に面白がってくれる人がいることが大事かも。

参加者皆で思い思いにラボブースや&green marketで起こった出来事を話していきます。その様子は、相互理解を深めることを目的として行われる“対話”というより、参加者が思いつくまま発言したり聞いたりしている、一件まとまりのない“雑談”といった様子です。

“やってみたいこと”をざっくばらんに“皆で話し聞く”ということ。理由や立場を意識してしまうことが多い日常の中で、“ただそこにあるから”や“美味しそう楽しそう”という思いから、小さなトライ&エラーができるラボブース。マーケットというパブリックとプライベートが交じり合う場を舞台に、そこで起こったことや感じたことを皆で話しながら皆で聞くという雑談は、立場を超えた個人として、新たな気づきや充実感をもたらし、次のやりたいことを見つけられる場になっているのかもしれません。

前と後の物語が生まれてくる

北本市内では&green market以外にも、様々な会場でマーケットが開催されています。参加者の一人が、印象に残っているマーケットでのひとコマとして、こんなエピソードを話してくれました。『友人が北本団地でマーケットをやる時に、丁度七夕の時期だったので、なにか会場の飾りをつくろうという話になり私も相談を受けたんですね。この辺りの地域では真菰(まこも)という植物を使って真菰馬(まこもうま)という七夕飾りを作る風習があるらしいと以前から知ってはいたのですが、作ったことはありませんでした。私は市民グループで田んぼをやっているのですが、同じ会でたまたま真菰を作っている人がいまして、幸いなことに馬も作れる人がいたんです。早速友人も交えて真菰馬を作る体験会を開催しました。マーケットの日には会場にその馬も飾りまして、近くで採ってきた竹で流しそうめんもやったりと大変好評でした。新たな出会いから新しいことが始まっていくことが、とても面白いことだと感じています』            その話を聞いていた別の参加者からは、こんな話も出てきました。『長い時間軸でやっていると、それぞれのタイミングで参加できる。その時間の中でいったりきたりできることがいいのかも。長い時間の中で関係性が変わっていくことが大事だと感じます』

マーケットの特徴の一つは仮設であること。仮設だからこそ、軽やかな一期一会の関係性を築くことができ、出店者もお客さんも気軽な気持ちで新たなことに挑戦したり、参加できることがマーケットの良さであると感じます。そして、その軽やかな関係性を保ちながらも、マーケットが継続していくことで、様々な出来事がマーケットの前後で生まれていきます。地域でひたむきに営業しているお店や活動を続けてきた市民団体、何代にもわたり農業を営んできた農家さんや、日々畑に向き合う若手農家さん。マーケットで出会う様々な事柄を通して、地域や暮らしを形作ってきた物語に出会うこと。その体験にもとづく、個人的な変化や気づきについて、驚きを交えながら雑談されていたことが印象的でした。

『マーケットに行くと、その地域・土地ならではのことや、もともと活動していた人たちがたくさんいたんだ!ってことに気付くんです』

マーケットが継続していくことで、既に活動をしている人だけでなく、これから何か始めようとしている人や、北本の魅力に出会いたい、その活動の一員になりたいと思う人の出会いを広げていくことも、マーケットの魅力の一つかもしれません。

2025年9月7日に開催されたマーケットの学校2025初回講座では、参加された皆さんの参加動機から&green marketやラボブースで起こったこと、その出来事から生まれた関係性や個人的な変化について、皆さんで共有をしてきました。次回の講座では、どんな話が参加者皆さんから生まれるのでしょうか。次回のレポートを楽しみにお待ちください。(文/写真:暮らしの編集室)