山本農園 山本浩之

丁寧な手作業から生まれる完熟トマト

5 代にわたって農業を営み、現在トマトとミニトマトを主力としている山本農園。旧中山道沿いにそびえ立つ、樹齢 100 年を超えるケヤキの巨樹が農園の目印です。山本農園では、甘味の強い完熟トマト「桃太郎」と、ミニトマト「サンオレンジ」、「サンチェリープレミアム」、「シシリアンルージュ」を栽培しています。

5代目・山本浩之さんに案内していただいた大きなガラスハウス(温室)には、高く成長したトマトの苗が隅々まで整然と植えられていました。緑の葉の間からは、赤くなり始めたトマトがちらほらとのぞいています。そんなガラスハウスの中で、山本さんにトマト栽培のポイントや思いなどを聞きました。

「トマトは苗から、ミニトマトは種から育てています。どちらも水をくれる(与える)タイミングが難しいですね。くれ過ぎると実は大きくなるけど、味が落ちるし、水分が少ないと甘さはあっても小さいし。苗も 1 本 1 本が違うから、土や実の様子を見て感覚で判断していますね」と山本さん。ほかにもトマト栽培には、さまざまな作業が必要です。

例えば、花が咲いたら受粉作業、実が付いたら日光を当てるために周囲の葉をカット、茎がある程度成長したら、より長く伸びていけるように茎を斜めにして支柱を留め替える作業を行います。「うちはトマトだけで 3200 本あります。やることがいっぱいで大変だけど、やればやっただけ良くなるからね。それに『今年のトマトはまずい』と言われたら困るし」と穏やかに話す言葉から実直な人柄が伝わってきます。

北本で初めてのトマト農園

今や多くの農家が栽培し、北本市の特産品となっているトマト。実は市内で最初のトマト農家となった
のは、他でもない山本農園でした。「知り合いが熊谷市でトマトを育てているのを見て、当時 18、9 歳だったうちの親父が、『北本でもできるだろう』とトマトを始めたんですよね。桃農家だったので桃の木を全部切ってトマトを植え、仲間と共同でガラスハウスを建てたと聞いています。かなり借金をしたようですよ」今お邪魔しているガラス温室は、トマト栽培を始めた1975年(昭和 50 年)当時のもの。割れてしまったガラスを張り替えたり、柱を補強したりしながら、大切に使っているそうです。

お客さんに直接届けるために

25 年前、山本さんは埼玉農業大学校を卒業してすぐ家業へ。「継げと言われことはなく、自分で、うちにはハウスがあるからやろうと思ったんです」と自然体でこの仕事を始めました。ちょうどそのころ、スーパーマーケット「ヤオコー」に野菜の直売コーナーが設けられるという情報をキャッチ。それまでトマトなどの野菜は市場に卸していましたが、直接消費者に届けられる点に魅力を感じ、販売先をそちらへ切り替えました。

現在、山本農園の野菜は市内 4 カ所のスーパーの直売コーナーで販売。ほぼ毎日、山本さんが自ら値段を付けて搬入し、売れ残ることはほとんどないとのことです。また、3 月中旬~ 7 月中旬には農園内に直売所を開設。楽しみにしているお客さんも多く、市外・県外から訪れる人もいるそうです。

「うちのトマトの特徴は、酸味と糖度のバランスが良いこと。お客さんに『おいしい』とか、『ほかとは違う』と言ってもらえるとうれしいですね。でも、好みは人それぞれなので、自分から『絶対うまいよ』とは言わないです」と山本さんはどこまでも謙虚。トマトの出荷のピークは、5 月上旬から梅雨入り前まで。ガラスハウスが真っ赤なトマトで埋め尽くされるのは間もなくです。

山本農園 直売所

住所 : 埼玉県北本市東間 6-49
電話 : 048-541-4820

※ 2 月下旬からトマトがある時期、午後のみ営業。お越しの際は お電話にてご確認下さい。