市民ライター 塚田愛

手話通訳の小倉さんから広がる、つながる

前編はこちら

手話通訳で社会福祉協議会(以下社協)で働き、広報『やさしい手』の編集などの仕事もしている小倉明美さん。元気な微笑みを絶やさない彼女と筆者が出会ったのは、&グリーンフェス(みどりとまつり)のボランティアを通してのことでした。

聴覚障がいがあり手話を使って生活している人も、手 話が好きな人も、興味があるけれどまだやったことがない、難しそうと思っている人も。そしてふらっと立ち寄ってくれた人も、楽しく手話でおしゃべりできる“場所”を作ろうと、『手話べりかふぇ』を北本団地の商店街にあるシェアキッチン『中庭』ではじめました。 

手話を通して人とひとをつなぐ、そんな小倉さんと手話カフェをご紹介しようと思います。

手話通訳者として働く小倉さんが北本の社協に働く場を移したのは、16年前のことでした。最初の うちは初めての場所、初めての利用者さんに戸惑うことも多かったそうです。「入職5年までは、心のうちを話してくれる関係にはなれなかった」そう小倉さんは話してくれました。

信頼関係を築くことは、健常者同士でも時間のかかるもの。小倉さんは手話通訳者としてたくさんコミュニケーションをとり、 少しずつ信頼を重ねていって、利用者さんと緊張せずに会話出来る、情報交換や気軽に会話を楽しんだり食事をしたり出来る間柄となっていきました。

 それから小倉さんのコミュニティーが広がっていくなかで、『手話べりカフェ』の取り組みは始まったのです。

『手話べりカフェ』は、シェアキッチンでジャズ喫茶でもある、北本団地『中庭』を昼1時半から3時半までの2時間、飲み物とお菓子などを楽しみながら、手話での会話を楽しめるイベント。

壁には 簡単な手話の挨拶などが貼ってあり、テーブルのメニューにも、商品の手話でのやり方のイラストが付いています。他に手話で50音を表現する”指文字“の表が置いてあったり、手話表現の本なども持ち寄って、自由に読めるようになっています。

集まったスタッフは手話通訳者、まだ手話が出来ない人、聴覚障がいの人がいます。注文や商品の提供、スタッフ同士のコミュニケーションなど、健常者同士とは違うやり方や工夫が必要になりました。

開催回数を重ねるごとに、問題点や改善点を話し合って、少しずつ良くしていきました。 2時間という短い時間ではありますが、聴覚障がい者さん同士の会話はもちろん、手話が出来るお客さんと興味があるお客さんで手話教室がはじまったり、手話通訳のスタッフも交えて手話で、言葉で おしゃべりしたり、賑やかな交流の場となりつつあります。

3月で4回目となり、少しずつ形になって来た『手話べりかふぇ』。しかし、新しいことをするのは 簡単なことではありませんでした。市内に住む人、暮らしの編集室、聴覚障がいの人、同じ手話通訳 の人、みんなの協力、助けを借りて新しいことができるようになる。だれかの力を借りて、誰かの力 になる、そんなwin-winの関係は社協の在り方にも通じるものがあると思いました。

『手話べりかふぇ』で広がるつながる

社協の活動の中でも、若い世代が関われる機会は中々多くありません。自然観察公園の動物の世話や、キャンプフィールドでの草むしりなどのボランティア。これだけでは、あまり楽しんで社協や福祉を認識してもらえないかもしれません。 

地域には様々な人が暮らしています。自分からは見えない場所で、視点で生活している人たちがいます。今は福祉を必要としていなくても、いつ自分や親しい人に必要になるかは分かりません。

 『手話べりかふぇ』のようなイベントに参加して、視野を広げることで、自分の中の“普通”をアップデートすることや、地域での助け合いのきっかけになるのではないでしょうか。

 『手話べりカフェ』をきっかけに、福祉を必要としない層にも身近に障がい者も健常者も色々な人がいて、気軽に楽しくコミュニケーションがとれるのだと知ってもらい、福祉や社協のことにももっと興味をもってもらえたらと思うのです。

小倉さんは言いました「大切なのは、人とひととのつながり。そして長く続けていくこと、やめない、諦めるない」。

『手話べりかふぇ』の試みはまだはじまったばかりです。
色々な人とのつながりや出会いを大切にしながら、小倉さんは進み続けます。

「手話べりかふぇ」

シェアキッチン、北本団地『中庭』にて

毎月第一木曜日開催(3月3日現在)

お気軽に遊びに来てください!