市民ライター 酒井めぐみ

やわらかな泥で童心に還り 美味しい野良飯で身体も喜ぶ 「田んぼの学校」で初めての田植え体験

2022年6月11日、「荒川わらの会」さんのイベント『田んぼの学校 田植え』が開かれました。
先日の取材からずっと気になっていた本イベント。
筆者にとって初体験となった田植え作業と、聴きしに勝った美味しい体験を、リポートします。

田んぼの学校 開校!

『田んぼの学校』は、不耕作田畑を活用し、里山保全活動を行っている市民団体、「荒川わらの会」さん(以降、わらの会)の主催する、連続体験プログラム。一年を通し、田んぼの整備、田植え、稲刈りを、楽しみながら体験できるようになっています。
田植え体験当日は、最高気温が22℃ほどの曇りの日。水は冷たいかな?足元はどんな感触かな?と、わくわくドキドキしながら向かいました。
集合時間の10時。揃った参加者は、赤ちゃん連れから80代まで30名以上!都内から参加の方もいらっしゃいました。

体験エリアは2箇所あり、「ミルキークイーン」エリアと、数種類の「古代米エリア」とに分かれ、手植えをしていきます。
レストスペースでは野良おやつ、お昼は旬の野良飯が振る舞われるということです。早く食べたい…!
さぁさっそく各エリアに移動し、スタートです。

初めての感触 初めての田植え

ミルキークイーンのエリアに着くと、田んぼには格子状に線が引かれていました。
やり方を訊くと、「この線は、苗を植え付ける目印」、「1~2本の苗を取り、マス目の線の交わるところに植えていく」、「浅いと苗が浮いてきてしまうため、植え付け時は深めに押しこむ」とのこと。
ともかくやってみましょう、ということで、いざ、入水!
恐る恐る足を入れると…湧水のせいか、水は冷たすぎず気持ちがいい!
そのまま底面に着地しますが、ズズ、ブブブ…。思った以上に足が入り込みます。
これは想像以上に身動きができない泥…と瞬時に焦る私。でも少ししたら、不思議と、そのぬかるみがなんとも心地好い…!
もう少し固めの底面(やや緩めの泥団子遊び程度)をイメージしていたのですが、このエリアの泥はさらさらとやわらかく、手ですくっても、まとわりつくのは一部です。少し水面をなでるだけで、大方が手から離れ落ちます。
日常ではまったく無縁となっている泥水体験に、こどもに戻ったようなドキドキを感じました。

感触を確かめたところで、苗束を手にし、いよいよ手植え挑戦です。
やわらかな底面に、苗をぐっと押しこみます。
始めは探り探りでしたが、次第に感覚が掴めてきました。植えた苗の隙間を進みながら、手前から奥へと、植えていきます。
腰を折り、4箇所植えては1列前へ進む。
一歩ごとに足が沈むので、進むのは思った以上に大変でした。膝まで泥だらけです。
そのためこどもたちは、なおさら足がとられて四苦八苦。それでも頑張って植えている姿が、印象的でした。
周りの皆さんも、80代の方は手慣れた様子でしゃきしゃきと、学生さん風の方はわいわいと、各々のペースで手植えを楽しんでいます。
四方から笑い声が、響いていました。

写真2枚目:私達親子が担当したライン…達成感!
写真3枚目:手植え終わりの足はこんな様子でした

ここでしか味わえない 野良おやつ

田んぼの脇には水場があり、流すと泥は、さーっと落ちていきました。
さっぱりしたところで、野良おやつをいただきます。
用意されていたのは、古代米の一種・アサムラサキ(朝紫)のおはぎと、桑の実ジャムでいただくパンです。
アサムラサキは、こちらの湧水、無肥料、無農薬で栽培し、手刈り、天日干しをしたもの。ほんのり感じる香ばしさと共に、甘すぎないなめらかなこしあんがマッチ!いくつでもいただけてしまうお味でした。
そして桑の実ジャムも、やはりこちらのフィールドにある大きな桑の木から獲った実で作ったもの。食べてみると、ブルーベリーとイチゴを掛け合わせたような風味!こどもたちも私も、ついたくさんいただいてしまいました。

写真1枚目:アサムラサキのおはぎ
写真2枚目:桑の実ジャムとパン

待ちに待った野良飯をいただく

参加者みんなが足洗いを終えた頃、時間はお昼近くに。
お楽しみの、季節の野良飯の時間です!

写真2枚目:大人用、野良飯プレート
写真3枚目:紫玉ねぎのアチャールと枝豆…たくさんいただきました

本日のメインメニューは、古代米のご飯でいただく特製カレーです。
副菜では紫玉ねぎのアチャール、トマトサラダ、ゆでたじゃがいもや枝豆が用意されていました。
アチャールというものを初めて食べましたが、ピクルスのようなお味にクミンシードがよく効いていて、箸がすすむ…!
トマトは甘みいっぱいで、大皿はあっという間に空っぽに。
そしてカレーは、こども向けの甘口と、大人向けのスパイシーな本格味です。こどもたちは、野良おやつをいただいていたのに、ばくばくカレーをたいらげます。少しもらったところ、甘みの奥にスパイスの味を感じられるものでした。大人向けも、ちょうどよい辛みに、ほろほろお肉。プチプチ食感の鮮やかな古代米ご飯も相まって、大変美味でした。
こんな美味しい季節の野良飯を、一緒に作業した皆さんと、オープンエアのフィールドでいただける贅沢さ…。
心も身体も嬉しいとは、このことです。

さらにお楽しみ!桑の実獲り と お土産

食後は各自解散…だったのですが、最後に桑の実獲りにも参加しました。

大きな桑の木には、たわわに桑の実が。そのまま食べられるとのことで、試しに摘んで食べたところ、つぶつぶの食感が楽しく、やさしい甘さにほっこりします。
たくさんの実を一気に収穫するため、ブルーシートを拡げ、長い棒で枝をたたくとのこと。
こーんと軽くたたくだけで、ばらばらーっと熟した実だけが落ちてきました。大人とこどもが交代しながら、シートをずらしつつ、一通り収穫。あっという間に、大きなジッパーバッグ2袋分です。ありがたいことに、その内1袋程をいただきました♪
お土産は他にも!
おはぎにも使われていた、アサムラサキです。
こだわり農法で作られた古代米のご飯を、自宅でも楽しませていただきました。

左:手のひら1杯程のアサムラサキ(炊飯前) / 右:アサムラサキに 白米ともち麦を混ぜて炊いたもの。見た目も美味しい紫色のご飯に

ジッパーバッグ1袋程の桑の実を煮詰めると 2瓶のジャムが出来上がりました

多世代で楽しめる 心と身体に嬉しい田植え体験

今回の田植え体験。毎日欠かせないお米の栽培作業を実地で学べただけでなく、ドキドキの泥の感触と美味しい野良飯を味わえた、とても充実した時間になりました。
そして何より、いろんな年代が一緒に楽しめたこと。
そんなイベントは、多くないのではないでしょうか。
様々な年代の方と同じ活動をするのは、特にこどもたちにとって、とても好い機会だなと感じます。
企画・ご準備を進めていただいた「わらの会」の皆さんに、感謝の気持ちでいっぱいです。
次回は、9月ごろに、稲刈りが予定されています。
あなたも一緒に、味わってみませんか?

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※「わらの会」での煮炊きは、新型コロナウイルスの感染対策を行い実施していますが、状況に応じて休止しています。