埼玉県北本市は、大正時代からトマトが作られているトマトの名産地です。現在でも多くの農家さんが、こだわりのトマトを作り続けています。4月から6月の梅雨入り前は北本トマトの一番の旬の時期。JA運営の直売所「地場物産館 桜国屋」や、農家さんが個人でオープンしている直売所では、所狭しと旬のトマトが並んでいきます。今回は6月4日に開催されました、旬な北本トマトをたっぷり味わう体験ツアーの様子をレポートします。
大正時代から続く北本トマト
北本市でのトマト栽培の歴史は古く、大正14年にさかのぼります。当時の日本では、トマトを食べることがまだ一般的ではなく、トマトの種をアメリカに輸出することを目的として栽培がスタートします。しかし種を採る事業はうまくいきませんでしたが、捨てていた果肉を利用することで北本トマトの歴史は花開いていきます。試行錯誤を行い、当時の石戸村では生食用トマトの出荷と果肉を加工したトマトクリームという商品づくりに成功。昭和に入った後の洋食ブームも追い風となり、生食用の「石戸トマト」は高級ブランドトマトとして知名度を獲得していきます。加工品のトマトクリームは缶詰にされ、上野精養軒や千疋屋、帝国ホテルといった一流の料理店で高く評価されました。
その後戦争へと突入する中で残念ながら石戸トマトの歴史は一旦終わりを迎えてしまいます。しかし、昭和40年初頭にトマト栽培は復活し、現在でも多くの農家がこだわりのトマトを作り続けているのです。今回の体験ツアーの舞台である「加藤トマト園」は、昭和40年初頭からトマト栽培に向き合ってきた、北本トマトのパイオニアです。
トマト一筋に50年以上 加藤トマト園
加藤トマト園は、北本市中丸地区で50年以上にわたりトマト栽培を営んできた老舗農家です。大玉トマトに加え、様々な中玉・ミニトマトの栽培を行っています。農園から程近く、約30年前から加藤トマト園が運営している野菜直売所には、常時15種類以上のミニトマトが並びます。100グラムごとの量り売りスタイルも好評で、直売所のオープン時には、外にお客さんの行列ができるほど。
加藤トマト園について詳しくはこちら『50年以上トマトを作り続ける 加藤トマト園のこだわり』
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もぎたてにかぶりつく 旬な北本トマトを味わう体験ツアー
6月4日のツアーでは、親子やご夫婦など約15名が加藤トマト園に集合しました。最初は加藤トマト園の加藤浩さんから、トマト栽培についてのレクチャーからスタートします。加藤トマト園のトマトはハウスで栽培されており、大玉トマトとミニトマトはそれぞれ別々のハウスで育てられています。トマトを収穫するのは春先から7月位までとなり、8月に入るとすぐに来年収穫するトマトの栽培準備に入るそうです。夏野菜のイメージを持つトマトですが、実は一年中収穫が可能な野菜です。しかし加藤トマト園では、味の良さと薬などを出来るだけ使わない栽培の実現から、春先から初夏の栽培にこだわり、それ以外の時期は土や苗の管理に注力していきます。
大切な土づくり
加藤さんを先頭にまずは大玉トマトのハウスに入らせてもらいます。ツアーの日は良く晴れていたこともあり、ハウスの中は30度以上の暑さとなっています。「これくらいならまだ涼しい方ですよ」加藤さんはにこやかに参加者をハウスの中に迎え入れていきます。トマト園では大玉トマトは土で育てられており、この土づくりにも加藤さんのこだわりが詰まっています。より良い土づくりをすることで、苗が丈夫に育ち、味が良くなるだけでなく、病気にも強くなり低農薬での栽培が実現できるそうです。加藤さんから大玉トマトの説明や収穫方法などの説明を受け、トマトのもぎとりがスタート。皆さんその場で採りたてのトマトにかぶりつき、完熟トマトの味を堪能します。
ピカピカのミニトマトたち
次に向かうのは、大玉トマトハウスの向かいにあるミニトマトハウスです。土で育てる大玉トマトに対し、ミニトマトは養液栽培という方法でトマトを育てています。養液栽培とは、肥料を水に溶かした培養液によって作物を栽培する方法です。加藤トマト園では、毎年20種類以上の中玉・ミニトマトを栽培しています。きれいに整理整頓され、管理されたハウスの中を進むと、色とりどりのミニトマトが鈴なりに実っています。ヘタから取りその場で口に放り込むと、ジューシーな旨味と酸味が口の中に広がります。加藤さんが事前に収穫したトマトも一緒に、皆さん好きなトマトを袋の中に入れていきます。
ご当地カレーで味わう北本トマト
収穫体験が終ると、次のプログラムは北本市のご当地カレー『北本トマトカレーづくり』です。加藤トマト園から歩いて数分の公民館に向かいます。北本トマトカレーは2011年に北本市で誕生したご当地カレーです。ライス・ルウ・トッピング全てにトマトを使うトマト尽くしのカレーで、市内を中心に約10店舗で食べることができます。誕生以来、横須賀市での全国ご当地カレーグランプリでの優勝など、数々のグランプリに輝いています。また、様々なメディアでも取り上げられており、レトルトカレーも人気です。そんな北本トマトカレーを考案したのは、今回ツアーの舞台にもなっている加藤トマト園の加藤浩さんです。ツアーの第二部では、加藤浩さんからトマトカレーの作り方を学びます。
北本トマトカレー公式WEBサイト
北本トマトカレーふるさと納税はこちら
トマト尽くしのカレーをつくる
公民館の調理室では、加藤さんが中心となりトマトカレー作りが進められていきます。皆さんが驚かれていたのが、トッピングとなる「トマトカツ」です。ミニトマトを豚バラ肉で巻いていくのですが、きれいにまくのが中々難しく、子どもも大人も一緒になってカツづくりに取り組みます。衣をつけて揚げると、中のトマトに程よく火が通り、お肉と相まって絶妙なおいしさです。北本トマトカレーのレシピは色々なサイトで紹介されていますで、ぜひご自宅で作ってみて下さいね。調理の片付けも終わり、13時頃にツアーは解散となりました。
北本トマトカレーレシピ / クックパッド 真っ赤な誘惑 北本トマトカレー
「高糖度や高級トマトが市場に溢れていますが、誰でも気軽に食べられ、なおかつ完熟で旨味があって美味しい、安心安全なトマトを作ること」加藤さんが目指すトマトについてお聞きすると、こんな答えが返ってきました。
大正14年に始まった北本市でのトマト栽培。様々な試行錯誤を経て全国ブランドとなった「石戸トマト」ですが、その情熱は今でも北本のトマト農家に受け継がれています。それは、毎日でも食べたくなる「普段使いのトマト」を、真剣につくるということかもしれません。