秋の訪れを感じる

北本市の西側、荒川にもほど近い高尾地区。地域には平安時代創建と伝わる鎮守『高尾氷川神社』をはじめ、縄文時代の遺跡など、歴史的な名所が数多くあります。里山を感じるのどかな景色のなか、晩秋には黄金に色づいたイチョウの葉の絨毯に出会うことができます。

火に強いため古くから屋敷の防火樹や街路樹として植えられてきたイチョウですが、高尾氷川神社近くではその種子である銀杏を栽培するための銀杏畑が広がっています。10月下旬に伺うと、まだ青々とした葉が茂り、枝には丸々と、熟した銀杏がたわわに実っています。この地で銀杏を栽培するのは、13代以上にわたり農業を営んできた金子果樹園。園主の金子尚弘さんに、銀杏栽培のこだわりについてお聞きしました。

ふるさと納税にも挑戦

金子果樹園はブルーベリーやプラムを中心に果樹や銀杏栽培を行う老舗農家です。春から初夏にかけて旬を迎える果樹園のブルーベリーは大粒で糖度も高く、北本市内の人気クッキー店『クッキークル』の限定かき氷にも使用されるなど、多方面で評判を呼んでいます。また、販売面でもふるさと納税やインターネット販売に挑戦し、お客様との直接的なつながりを大切にすることで、多くのファンやリピーターを生み出しています。

銀杏は品種で差が出る

金子果樹園が銀杏栽培を始めたのは今から約30年前。現在では約110本のイチョウを年間通して管理しています。園で栽培している銀杏の品種は『久寿・藤九郎・金兵衛』の3種類。銀杏の全国的なブランド産地である愛知県の『祖父江(そぶえ)ぎんなん』でも、同じ品種が栽培されており、味と品質に定評のある銀杏の代表的な品種です。

現在栽培している銀杏は、尚弘さんのお父さんが植えたもの。「苗屋さんと相談して親父はこの品種を選んだらしいんだけど、先見の明があったと思います。銀杏って種類によって味や大きさが違いますから。銀杏にとって品種はとても大切なんです」と尚弘さん。一見同じ様に見える銀杏ですが、比べてみるとその大きさや味は品種によって異なります。金子果樹園で栽培している銀杏の特徴をご紹介します。

久寿(きゅうじゅ)…もっちりとした食感で苦みが優しく、食べやすい味わいが特徴です。大粒の品種で3Lサイズなどは料亭でも使用されています。金子果樹園では銀杏ご飯もおすすめです。

藤九郎(とうくろう)…皮が薄く割りやすい大粒の品種です。絶妙な甘さとほろ苦さがあり、銀杏好きに好まれています。

金兵衛(きんべえ)…粒は中粒でやや縦長。柔らかいのにさっくりとした食感が特徴で、収穫時期が短い早生の品種です。

北本で数少ない銀杏農家

北本市で銀杏を本格的に栽培している農家は、金子果樹園を含めて数軒しかありません。それは銀杏栽培特有となる、植え付けから出荷までの期間も関係しています。「銀杏は木を植えてから最盛期を迎えるのに20年位かかります。うちでもやっと採れ始めたのがここ10年くらい」と尚弘さん。また、最盛期を迎えてからも大粒の実をしっかり実らせるためには、陽当たりも重要なポイントとなります。「陽の当たらない枝は実の成りも良くないし、将来的には枝が枯れてしまいます。その為、定期的に剪定をして木の形を整えるのがとても大切。一年を通して剪定はしますが、10年に一度のタイミングで大規模な剪定も行っています。今年が丁度その年で、収穫量がかなり少ないんです」と尚弘さん。

手をかければかけるほど

園では剪定の他、年に3.4回ほど肥料を与え、銀杏の殻を作るのに重要な養分となる貝殻肥料も散布しています。「銀杏もブルーベリーも、手をかければ木は応えてくれると思います。それはやっぱり子育てと同じですね」尚弘さんのきめ細やかな栽培管理が実り、今では安定して美味しい銀杏を全国のファンへ届けています。銀杏栽培の農家は近隣に少なく、埼玉県やJAなどにも銀杏栽培の専門家はいないそうです。その為、尚弘さんは10年前から国内のブランド産地に足を運び、農家を訪ね話を聞き、つながりを作ることで栽培方法や流通について勉強を重ねてきました。

銀杏は栄養バツグン

金子果樹園の銀杏収穫量は年間600kgから700kg。実も含めるとその収穫量は4倍ほどになります。銀杏はイチョウの実を収穫し、洗浄乾燥した種の部分ですが、園では洗浄後の乾燥は天日干しを行っています。「半日だけ天日に干すんですが、紫外線で乾燥すると匂いが消えるんです。保存も出来るようになるので、冬場の鍋物にもおすすめです」と尚弘さん。銀杏はビタミンだけでなくカリウムなどのミネラルも豊富に含まれています。その栄養価の高さから、昔からスタミナ食や薬用として親しまれてきました。

つながりの中で

尚弘さんが子供の頃、辺り一面は桑畑や麦畑が広がっていたそうです。時はめぐり住宅などで畑も少なくなりましたが、金子果樹園の銀杏畑は近代化する里山の中でも昔の風景を残す、貴重な財産の一つです。

金子さんに自身の農業について、やりがいや心がけていることをお聞きすると、こんな答えが返ってきました。「私が果樹や銀杏を主に手掛けているのは、先祖から引き継いだものや栽培方法、相性という理由もありますが、個人的な話をすると、果樹は花が“きれい”なんですよね。イチョウも葉が紅葉してきれいじゃないですか。それは自分のモチベーションの一つになっています。あと、銀杏畑の管理は確かに大変なんですが、手入れがされていて気持ちがいいのは、私もそうだし皆が共通する感性ですよね。今ある畑を荒らすことなく、子供たちにとっても出来るだけ良い環境を残したいという想いもあります」先祖代々受け継いできたものを、地域の人と一緒にその風景も次世代に引き継いでいく。手入れがされた金子さんの銀杏畑からは、その想いが伝わってきます。

想いも一緒に届ける

金子果樹園では、銀杏をふるさと納税やネットショップで販売を行っています。ボックスには、大粒銀杏と一緒に『銀杏って、どんな樹の実なの?』と題した資料が同封されており、ページをめくると、イチョウや銀杏について分かりやすく写真付きで記載されています。「銀杏ってそんなに頻繁に食べるものじゃないし、嗜好性の高い食べ物だと思うんです。最近の若い人だと、銀杏自体に馴染みのない人も多いと思います。だから、できるだけ多くの人に銀杏を食べてもらって、より親しみを持ってもらいたい。採れたてフレッシュな銀杏をお客さんにお届けして“おいしい”って反響をもらえるのは、やっぱり励みになります」と尚弘さん。品質には絶対の自信がある金子果樹園の銀杏。地域にとっても貴重な風景である銀杏畑を、金子果樹園ではこれからも守り続けていきます。

これから旬を迎える金子果樹園の大粒でフレッシュな採れたて銀杏を、ぜひ食卓でお召し上がりください。大粒でもっちりとした食感、ほのかな苦みと華やかな香りに病みつきになりますよ。金子果樹園の大粒銀杏は下記のお店や方法でお買い求めいただけます。

北本市地場物産館 桜国屋(北本市深井 7-265-4)

北本市ふるさと納税 北本産 大粒銀杏(殻付き) 500g