こちらの記事は『きたもとスコープ 栁井さんの話 前編』からの続きです。後編では写真をはじめたきっかけや、最近のものづくり熱についてなど「栁井さんの話」は続きます。
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―写真をやっていたと仰っていましたが、いつ頃からやっていらっしゃるんですか?
写真は高校ぐらいからです。何て言うんですかね、なんか遅れてきた反抗期みたいな時期があって。中学や高校の頃はずっと反抗期がなくて。大学は一浪してまで入学したにもかかわらず、途中で辞めてしまったんですけど、その頃少し精神的に様子がおかしくて。大学に通ってはいたんですけど、なんかしっくりくる感じがしなかったんです。大学では理工学部だったんですけど、全然反対の音楽とかアートとかデザインとかに興味が出てきたんですね。
高校を卒業するときも写真の専門学校に行こうかと思ったこともあったんです。結局大学に行ったんですけど、やっぱり興味はずっとあって。僕が高校生や大学生だった頃は、音楽雑誌とかカルチャー雑誌とか、CDがガンガン出てた時代だったんで、CDのジャケットとかも、有名なグラフィックデザイナーさんがデザインしていたり。雑誌も今は有名になっている写真家の方が若手カメラマンとして活躍していたり。そういう流れに惹かれて、昼間は働いて、夜は写真家の方が主催していたワークショップに通ったりしていました。これは参加したワークショップで制作した写真集です。
―え!自分で本にしたんですか?
ワークショップの最後に修了制作として受講者みんなとメイン講師の作品で1冊の写真集を制作したんです。吉永マサユキさんと森山大道さんがメイン講師で、毎回いろんな分野で活躍している方がゲスト講師にきてくれていました。
―格好いい本ですね。では本格的に写真を始めたのは大学の頃なんですね。
大学は結局辞めてしまったので、アルバイトをしながら、写真を勉強したり、ライブに行ったり、旅行に行ったり、フラフラしている感じで。
―すごいめっちゃ自由ですね!
ダメダメな感じだけど、一番やりたいことをやっていた時期ですね。社会的に見れば、大学辞めて何やってんのみたいな感じだし、相当どうしようもない時期でしたけど。でも、その時期に写真を撮っていたのは大きかったですね。結局、写真を仕事にするまでには至らず、違う業種に就職したんですけど、写真は好きでずっと続けていました。
―なるほど、就職後は趣味程度にとどめておいてって感じなんですね。
そうですね。 でもみどりと広報部で自分で写真を撮って記事を書いて…という作業をしていると、ものづくりはやっぱりいいなって再認識しますね。子供が&green marketに参加したり、浦和パルコで本を特集した催事「うらわのほんの山」に手づくりのZINEを出させてもらったり、ここ最近、何かつくるっていいなって気持ちがふつふつと湧いてきています。
―リソグラフが人気になったり、手軽に作れるZINEが流行っていたり、ものづくりのハードルは下がっている雰囲気を感じます。
そう。やっぱり写真ワークショップに参加してた時期って、「ちゃんとした写真集を作りたい」みたいな気持ちがあったんです。でも、写真集を作るって、すごくハードルが高いじゃないですか。だからなかなか手が出せないけど、最近は自分でつくれるZINEとかが人気になって、印刷や製本がすぐ自分でできるのがいいですね。
去年の夏休みに、家族旅行で撮った写真をまとめてZINEにしたりとか。
―わ~、素敵ですね!結構この2~3年のあいだに、またものづくりを始めたって感じなんですね。
そうなんです。フィルム中判カメラしか持っていなくて、しばらくはスマホで写真を撮っていたけど、やっぱりちゃんとカメラで撮りたいなと思って、コンパクトデジカメを購入しました。最近は製本にも興味が出てきて、製本の技術を学ぶプログラムをやっている協会と出会ったり、印刷や製本に関係する企画に足を運んだりしてますね。この前、こども図書館に子供と一緒に本を借りに行ったら、製本所の仕事を紹介する絵本があって、「へぇ、こんなのあるんだ」と思ってよく読んでみたら、埼玉の八潮市にある製本所の話で(笑)。そこで働いている方が「十七時退勤社」という個人出版レーベルやってらっしゃって、そのレーベルの本がすごく好きで何冊も持っていたという。この絵本もこども図書館にあったハードカバー版とは別に、リソグラフ版があるということで、探して買いました。ちょうどリソグラフを使い始めたところだったので。ここ最近、ちょっとしたきっかけから、そういうことがえらい繋がっちゃっていて(笑)。
―不思議な縁というか、一周回って帰ってきたというか。
そうそう。だから自分の生き方を改めて考えざるを得ないようなところですね。仕事ばかりで家族と距離ができてしまって、大変な思いをさせた時期がかなり長かったので、そういうことも影響しているかもしれない。自分のやりたいこととか、働き方とかを含めて、残りの人生をどうしていくのか、改めて突きつけられているような感じがしています。
就職してからはずっと仕事、仕事の日々だったんですけど、40歳を過ぎると人生折り返した感もあるし、子供はどんどん大きくなってきますし。残りの人生をどう生きるかと考えたりするなかで、改めて自分がやりたいこととか、興味があることに向き合うことができてきているのかもしれないですね。