北本の街中には住宅街の隣に今も多くの雑木林が残っています。30年近い歴史を持つNPO法人北本雑木林の会が手入れの活動をすることで残ってきたこの雑木林は、2016年から子供達の遊び場「モリトコ」のフィールドとしても活用されています。北本の緑を守るまちの先輩「雑木林の会」と、それを受け継ぎ活用する「モリトコ」の若い世代の方々の繋がりについて聞きました。

雑木林の会:白川、坂
モリトコ:橋本、石井、田中

(対談収録 2019年12月24日)

雑木林とモリトコの出会い

─(雑木林にて)気持ちのいい場所ですね。雑木林の会はいつから活動しているんですか?

白川 雑木林の会の立ち上げは1993年です。今はこうやって林の中に入って遊べるような状態になっていますが、当時は中に入れず薄暗くて、粗大ごみの不法投棄も多かったんです。それを何とかしたいなと始まりました。私有地なので地主さんと相談して、最初はご近所さんと一緒に家の周りの林から片付けました。掃除や下草刈りをして、林を活かして綺麗にすると、ゴミを捨てる人は減るんです。段々と関心のある人が集まって関わる林も増えて、今の形になっています。

30年近く続いている活動なんですね、すごい。モリトコの皆さんは、どういうきっかけで雑木林での活動を始めたんですか?

橋本 2016年の冬頃に市民と市長が話し合うイベントがあって、そこで知り合ったママさんと「学校以外で決まりや規制がなくて自由に遊べる場所・空間があるといいよね」と意気投合したんです。その方が雑木林の会と繋げてくれて。実際に雑木林に遊びに来たら、すごくいい場所だったので、ここで子供が遊べるような活動をやろうと、その年に 「森と子育てのつどい」通称「モリトコ」が始まりました。

石井 私は最初は遊びにきている側でしたが、お手伝いしたいなと思って、今は一緒に活動しています。 

田中 私は立ち上げから一緒に活動しています。この環境が暮らしの近くにあるのは素晴らしいなと純粋に思います。最近は子ども達自身が「雑木林に遊びに行こう」と日常的に言うようになりました。落ち葉にダイブするのが大好きです。大きくなってからも楽しめるし、必要な環境なんだなと実感しています。

  モリトコでは、具体的にどんな活動をしているのでしょうか?

橋本 今は月1-2回程度、雑木林を会場にプレーパークという形で「モリトコ」を開催していて、なるべく規制をせずに子ども達が自分の責任でのびのび自由に遊べるような場をつくっています。市内市外問わず遊びに来てくれる人は増えていますね。 理解してくれる人が増えてきているのは嬉しいです。世代が違っても繋がっていくこと、続けていくことが重要ですよね。

(プレーパークとは・・・公園の遊具などでの決まった遊びをするのでなく、子供たちが自然の環境でのびのびと想像力を発揮して、工夫して自ら遊びを作り出せるような遊び場のこと)

大人も子供も楽しめる雑木林の魅力

実際、暮らしの近くにこんな緑の環境があって、ある程度自由に使えるって素晴らしく贅沢なことですよね。 

白川 都内に住んでいる息子が月1回子連れで帰って来るんだけど、都内ではこんなに良い環境は探せないって言いますね。自由にやれるところは少ないらしいんだよね。

  モリトコは女性が多いんですか?

橋本 6人のスタッフはみんな女性ですね。(現在は雑木林の会の会員)遊びに来る人は最近パパも増えました。 

雑木林の会としても若い人が来ると嬉しいですよ。プレーパークのロープとか一緒にやったりして、力仕事も助かってます。

男性の参加者も増えてきているんですね。男女限らず、子供だけでなく大人でも雑木林で遊びたい、という人もいるような気がするんですがどうでしょうか?

石井 モリトコからすると大人だけでも来てほしいって思ってるんだけど、プレーパークっていうと子供向けな印象があるのかな。私たち以外にも雑木林を使って何かやってほしいですね。

橋本 大人も楽しめなくちゃ、結局子供も楽しめないと思っています。モリトコの時は子供も大人もそれぞれ好きなことをする、そういう時間があるのもいいんですよね。ほかのママパパと話すきっかけにもなって、それも結構楽しいんです。

モリトコで若い世代が入ってきて賑やかになったと思うのですが、雑木林の会としてはどうですか?

白川 雑木林の会の人は作業を伴った自然が好きなんですよ。作業量も多いし、モリトコで子供たちと遊びたくとも、なかなかできていない現状もあります。

橋本 みんなずっと働いてきて、ようやく自分の時間を持てるようになって自然の中に来てるのに、それでまた若者に気を遣うのは大変ですよね。若者もきっと、雑木林でぼーっとゆっくりしたいだけなんですけどね。 

白川 なるほどね。若者も忙しいからたまにはぼけっとしたいと。場所がこういうところだと気持ち良いよね。だから、それでいいと思うんだけどね、ぼけっとしてたり作業してたりね。

ハンモックあるから、お父さんお母さん来ると乗ったまま寝てたりするよね。あれ気持ちいいんだよ。

うまく交流が進むといいですね、気を使わずにいられるような仕組みとか、色んな関わり方が見えると、使う人も増えて、雑木林を守る活動に興味を持つ人も増えそうです。 

白川 例えば、定年とかで退職してすぐ地域社会に溶け込もうって難しいんですよね。結局みんな働いていたからばらばらで。会社の付き合いはあっても地元には繋がりがない。だから週末とか時間のあるときに少し雑木林に来て、地域社会に居場所を作っておくのも良いんじゃないかな。

みんなが楽しめる開かれた雑木林へ

これから雑木林でどんなことをしていきたいですか?

白川 若い人も入ってきて欲しいのはもちろんですけど、北本には囲碁・俳句・ダンスなど交流団体がいっぱいあるので、そうした団体の人たちにも雑木林を大いに利用していただきたいですね。

橋本 プレーパークに関しては、いずれは行政が入って常設になったらいいなと思います。安全面に関してもしっかりカバーして、よりたくさんの人が入れるようになるのが理想です。生真面目にやってると誰かが手を貸してくれたり人と繋がることもあるんで、続けていきたいですね。

 ─常設になったら、遊びに行く選択肢に児童館や図書館と並んで雑木林が出てくる。 すごく豊かなまちになりますね。 

橋本 でもやっぱり一番は自分が楽しめるかどうかですよね。やっている人が楽しんでないと、続かない。みんな雑木林でやりたいことやってるからね(笑)雑木林を楽しみたい人が気軽に遊びに来られるようになれば嬉しいです。

対談を収録した1年後には、雑木林の活動拠点「どんぐりハウス」が出来上がり、現在はより一層活動の幅が広がっています。

コロナウィルスの感染拡大が落ち着いたら、ぜひ北本の雑木林に、遊びに来てみてください。