きたもとスコープ

スコープ( SCOPE)とは 光学機器の名称で望遠鏡(テレスコープ)顕微鏡(マイクロスコープ)潜望鏡(ペリスコープ)などの種類があります 。

きたもとスコープでは「きたもとまちびらきプロジェクト」に参加する人々へのインタビューやレポート記事を連載します。同じ北本に集っていても、人が違えばみえている景色も違うはず。記事を通してその人の視点からきたもとの暮らしをのぞき見る。そんな連載です。

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「彼から『街の自転車屋さんが絶対いい』って言われて。街の自転車屋さんで自転車買うの?ってびっくりしたんですよ」

2022年秋ごろに北本市内に引っ越してきた阿部真乃さん。普段はフリーランスでお仕事をされています。生まれてからずっと東京で暮らしてきた阿部さんは、都外に住むのは今回が初めてだそうです。北本の生活は、今までの生活と全然違う体験ができると阿部さんは言います。そんな阿部さんからみた新鮮な北本の暮らしをのぞいていきます。

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―どういった経緯で北本に流れ着いたのでしょうか

流れ着いたってのはすごくいいワードかもしれない。そうですね、北本に引っ越す直前は東京都町田市っていうところに、家族と一緒に住んでたんです。その前も都内にずっと暮らしてて、品川とか新宿とか、あと東京ドームがあるところとか、割と都心に住んでたんですよ。なので結構私の中では町田市の時点で十分郊外の感じがするというか、都心に比べると少しゆったりしたところがすごい気に入って、そういうまちがいいなって思ったんです。でも町田駅とかってすごく大きくて、本当に人の出入りとかもすごくて。もう少しひっそりとしたまちで暮らしたいなって思い始めたんです。ちょうどそのタイミングで、今お付き合いしてる彼が北本の出身で、たまたま機会があって北本市の実家に伺いました。何度か北本に通っていくなかで、北本がすごくいいって思いはじめて。ちょうど同棲を考えていたので、暮らすなら北本がいいって私の方から彼に提案をして、北本市内で家探しをしました。

―静かなまちに魅力を感じる理由というかきっかけはあったんですか

今、フリーランスとして働いてるんですけど。会社を辞めてフリーランスになったばっかりぐらいのときに、町田に引っ越したんですよ。その前ぐらいからコロナもあったりして、在宅での仕事がメインになってたんです。それで家の中で過ごす時間を充実させたいなって思ったときに、やっぱり都心は家賃がすごく高くて。私はフリーランスで独立したてぐらいのタイミングだったんで、もう出費が大変だなって思っちゃって。

あんまり田舎に対して憧れはなかったんですけど、一回町田に暮らしてみたらすごくのんびりしたところがいいなって思って、もう少しのんびりしたいなって思うようになっていったっていう段階的な感じですね。

―北本がいいなって思ったポイントはどこだったんですか

前から北本に住んでいる人からしたら「なんで?」って思うかもしれないんですけど、初めて北本に来て東口のエスカレーターを降りたバスターミナルの光景を見た瞬間に「ここいいまちだ!」って思ったんですよ。みんなピンとくるポイントっていろいろあると思うんですけど、私の場合は何ていうのかな。すごく整ってるっていう印象だったんですよ。

キャンプが好きなので、群馬とか新潟、長野に行ったりするんですけど、そういうところとも全然また違う。都会と自然が豊かなエリアのあいだの感じがして。すごく自然豊かでいい空気が流れてるのに、寂しくない感じが北本の印象だったんです。まち的にすごく落ち着いてるなっていう印象で。はじめて来た時点で「ここ良い!」って本当に思ったんですよ。
今でも彼には、たまたま北本市に生まれてくれてありがとうって感謝してます(笑)。そうじゃなかったら知らなかった街ですし、なんなら私は彼と別れた後ももう北本に住んでると思う(笑)。

―すごいガッツリ北本にはまってますね

不思議だなって思います。全然縁もゆかりもないのにこんなに好きになれるって。しかも私、北本を本当に好きになりすぎちゃって、町田に住んでた母も引っ越してきたんですよ

ーそうなんですか、すごい

しかも私が引っ越した2ヶ月後には引っ越してきているんです。何度か一緒に北本に来て、車を借りてJAに行ったりとかして。いろいろ回ったりしていくうちに母も決めてくれて。

―実際に住んでみていかがですか、もとめていた静かな暮らしですか?

もう静かな暮らしはできているのですが、それに加えて何から何までギャップの連続というか、カルチャーショックというか。いい意味で「こういうことなんだ!」っていうことの連続なんですよ毎日が。

―例えばどんな

例えば、今日も乗ってきた自転車。都内にいるときって自転車を停めるところが基本ないんですよね。なので、自転車に乗っている人は自転車が好きな人か、あとシェアサイクルとか。私はスカートも履くし、自転車を漕ぐ機会はないって思ってたんですけど。

引っ越してからはちょっと遠くまで行きたいなと思ったときに、北本市内だったら自転車で行けるよって言われて。そうなんだと思って。じゃあ自転車を買おうってなったんです。そのときも普通にネットで買おうと思っていたんですね。そしたら彼から「まちの自転車屋さんが絶対いい」って言われて。まちの自転車屋さんで自転車買うの?ってびっくりしたんですよ。その時点では「いいよ別にネットで安いの見つけるし、楽天のポイント貯めたいから…」みたいな感じで返したんですよ。そしたら修理のこととか、あと試乗しなきゃ駄目って言われて。「いや車かよ」みたいな。私は「自転車なんてどれも一緒だし」ぐらいに思ってたんですけど、彼は試乗してまちで買うものだみたいな。結局近くの自転車屋さんに行ったんです。やっぱり試乗してみたらこんなにも違うんだって。もちろんクッションとかもそうなんですけど、自転車って走ってるけど漕いでない間「シャァ―」って言うじゃないですか。最近の自転車はシャァーって言わないんですよ。こんな違うんだ!って。自転車一つにしてもね、発見することがあるんだなって感動してます。例えばですけど「こういうふうにやるんだ!」みたいなことがすごくいっぱいある。

―まちでの動き方を体に落とし込んでる、しみこませているみたいな感じなのかもしれませんね

確かにそうです。東京に住んでる頃って、街って住むだけの場所にしかならないというか。いろんな体験は、自分の住んでる街とは別のところでやることが多い気がするんですね。
意外と寄り道しないで帰ってくるみたいな。でも北本に住んでると自分の家を軸にいろんなところに行く。でも、市内に収まってる。みたいな感覚がある。ある意味北本内に行動は限られてるのかもしれないんですけど。そういう自分が今まで経験したことのない文化で暮らして、それが嫌な摩擦じゃなくて、確かにそうだねってなってすぐ馴染める感じがして。なんかすごく楽しい。

私の小さな世界の話ですよ。でもすごく私は引っ越してきてよかったって思う。

阿部さんの話は後編へと続きます。