きたもとスコープ

スコープ( SCOPE)とは 光学機器の名称で望遠鏡(テレスコープ)、顕微鏡(マイクロスコープ)、潜望鏡(ペリスコープ)、などの種類があります 。

きたもとスコープでは、「きたもとまちびらきプロジェクト」に参加する人々へのインタビューやレポート記事を連載します。同じ北本に集っていても、人が違えばみえている 景色 も違うはず。記事を通してその人の視点からきたもとの暮らしをのぞき見る。そんな 連載 です。

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「団地はいろんな人が集まって、共存しながら一緒に生活をしている。つまりビオトープだなって」 早野圭一さんインタビュー

今回は北本市在住、緑地管理関係のお仕事をされている早野さんにインタビューを行いました。早野さんは奥さまと小学生くらいの息子さん・娘さんの4人家族で北本に暮らしています。平日のお仕事とは別に、休日には「荒川わらの会 」の活動や、北本市内の自然保護活動に参加されているそうです。インタビュー実施日の午前中も「わらの会」(※1) で管理している田んぼの水路の整理を行いました。

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こちらの記事は #きたもとスコープ 早野さんの話 前編 からの続きです。

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―わらの会ではどういう活動をしているんですか?
今日水路の整備をやった田んぼのほかに、その下にもその脇にも「わらの会」で借りてる田んぼがあるんですよ。その一部を仲間と一緒に管理してます。自分は別に農家じゃないので深くは携わってないですが、農って哲学だなって感じることがあります。

―農は哲学、格好いいですね
いや本当に。だって食べ物だし。どういうものを食べたいか、体に入れたいかっていう考え方がそのまま育て方や農法に代わってくるんですよね。ここはみんなで借りているので、当然考え方もやっぱりそれぞれなんです。生産性なのか無農薬なのかとか。全然それぞれでいいと思います。哲学なので。こちらが目指しているのは後者で、無農薬で子供も関われる場所でつくっていきたい。今はそういう方向でやってます。

今日の作業は新たな水路をつくったんですけど。理由としては今までの水路のままでは、その水路から他の田んぼにも水が染み出ちゃうっていう意見があって。田んぼによっては、冬場にしっかり乾燥させたい方もいるんです。こっちが遠回りすればそういった影響が少なくなるかなっていう。あと深水田んぼって言って、ちょっと水を深めにするんですよ。それは無農薬だから、なるべく草をはやさないために水を深くするっていうのがあって。他にもいろいろあるんですけど、今日最後に岡野さんと小さな池を作ったのは、苗づくりのためで。田んぼは苗を作んなきゃいけないんですけど、育つまで1日2回水を撒かなきゃいけないので、水を張った場所に置いとけば、水やりの手間が減るかなと。いろいろ実験ですよね。自分たちは休みの日しか来れないんで、それでも無農薬でできるかなっていうのをいろいろ試してるところですね。

―平日はお仕事をして、休みの日に「わらの会」とか「とんぼ池公園」の活動をしてるって感じなんですね。スローライフというかのんびりした暮らしですね。
そうですね。実際やってみるとすごくハードだけど。腰が痛いし。

―フィジカルにくるんですね(笑)。同居人が都会育ちなんですけど、野菜がどうやってできるのか全然知らなくて。去年の夏、一緒にベランダでキュウリを育ててみたんですよ。こんなに時間がかかるのかって驚いてました。
タイムパフォーマンスはないよね。間違いなく余裕がないとできないし。さっき言ったように、農は哲学だから時間じゃなくてどういったものを食したいかなんだよね。

自分で育ててみるとやっぱり売ってるものの見方もね、変わってくるんですよ。追求すると、どんどん深く入ってっちゃうから、あんまり深入りはしたくないんだけど。なんでスーパーの野菜が虫もついてないし同じ形なんだろうって。そういうのを知ると、種は自分で採んなきゃとか、深いところまでハマって帰ってこれなくなっちゃう(笑)。

―食べ物だけじゃなく、ものづくりもよくされていますよね
もともとアートとか、詳しくないけど好きだったのかなと思います。高校生とか中学校ぐらいからファッション誌をよく読んでて。裏原宿とかそういう文化にも影響を受けて、関連しているアーティストの展示会とかも行ったりしてたんで。そういう延長線上で芸術というか、ものづくりにも興味があるのかもしれません。別に自分がやろうとはあんまり思わなかったけど。クリエイティブと言うとちょっと格好よすぎるけど、そういう感覚で緑も意識しているのかなと思いますね。

今も勝手に「みどりとまつり」のフェスTをつくったりとか、縄文音楽祭のTシャツもつくったり。それも多分裏原宿とかのTシャツ文化が影響しているかもですね。関係者の皆様あたたかく見守っていただきありがとうございます(笑)

―経験が全部つながっていくんですね、面白い
そういうもんじゃないですかね。みんな自分の経験をミックスして、何か新しいものを作っていくっていう。「モリノジュークボックス」っていうのも今勝手にやってますけど。それは昔レコード屋で働いてたっていうのと、今の緑地を掛け合わせたやつだし(笑)

―&greenマーケットでも「モリノジュークボックス」や「北本太郎展」をやってますよね。ちょっとマーケットの中では異質というか、他の出展者とは違う感じがしてます。私は面白いと思ってるんですけど。
そうですよね。でも変な人がいることって大事だと思います。子供たちにとってもそういう変わった大人がいることって大事だと思ってます。特に学校に通いだすと、大人の種類が先生と親だけになりがちで、それだと狭いですよね。もっといろんな人がいて、いろんな生き方があることを感じられる環境は大事だと思います。北本太郎展に参加した子供が大きくなったときに、そういえば子供の頃そんなイベントしていたおじさんがいたなと思い出してくれたら、しめしめです(笑)

―特に地方だと大人の多様性の幅が狭くなりがちですね
聞いたことある人も多いと思いますが、昔は都会の子があんまり色々な体験ができなくて、例えば魚の絵を描きなさいって言われて、刺身の絵を書くというのがありました。今都会の裕福な子は、いろんな体験をさせられる。逆に田舎というか貧しい家庭の子が、そういう体験ができなくなってる。体験が乏しい子が、刺身の絵を書くっていうエピソード。でも北本にはお金のあるなしにかかわらず、いろんな体験ができる場所がいっぱいある。北本団地もそのひとつで、商店街なんかはいろんな人が関われる空間ですよね。だからそういった体験ができるまちにしていきたいなって。そうした体験は絶対将来に役立つものだと思うから。対人関係とか協調性とか。なにかをやるとか、考えるとか。環境に身を置かないと出来ないと思うので、そういう環境を作っていきたいっていう思いはありますね。

―最後に、北本でおすすめの場所はありますか?
団地(北本団地)じゃないですかね。

―そこはビオトープとかじゃないんですね
人間のビオトープだからね、団地は(笑)。一般的なビオトープは虫が鳥に食べられ、鳥がまた食べられてという、食う食われるの生態系構成に多くの生物が共存している空間です。団地は食べる食べられるではないですけど、いろんな人が集まって、共存しながら一緒に生活をしている。つまりこれもビオトープですね。

―でも団地って50年前くらいにできたらしいじゃないですか。50年前にバーっとできて、一気に廃れていくんですね。そんなに人の流れって早いんだと思って。この間話を聞いてびっくりしました。
そうですね。だからものをつくったりとか、建物を作ったりするのは100年くらいあとのことを考えることが大事ですね。明治神宮の森を作った人も100年構想でつくったと聞いています。永遠に続く森にするっていうのが目標らしいです。

自然って森になる順番があるんですけど。まず草が生えて、パイオニア種と言われるアカマツとかアカメガシワとかが生えて、次に落葉樹が生えて、最後に常緑樹。それで鎮守の森になっていく。長いですよね。

―じゃあこの辺も100年後にはどうなっているのか
そう100年構想。全然考えてないなって今はっとさせられましたけど。

―でも100年後まで残ると面白いですね
パソコンのデータとかより、手書きのノートよりも、石碑が一番残る。縄文土器とかもそうですね。だから石碑を作りましょう(笑)

―1000年後とかに誰かが発見するみたいな
早野ってやつがやってたぜっていう石碑があって、ビオトープとか書いてあって。1000年後の人からしたら「なんだよビオトープって」みたいな(笑)。もうちょっと考えとかないといけないっすね。