きたもとスコープ

スコープ( SCOPE)とは 光学機器の名称で望遠鏡(テレスコープ)、顕微鏡(マイクロスコープ)、潜望鏡(ペリスコープ)、などの種類があります 。

きたもとスコープでは、「きたもとまちびらきプロジェクト」に参加する人々へのインタビューやレポート記事を連載します。同じ北本に集っていても、人が違えばみえている 景色 も違うはず。記事を通してその人の視点からきたもとの暮らしをのぞき見る。そんな 連載 です。

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「団地はいろんな人が集まって、共存しながら一緒に生活をしている。つまりビオトープだなって」 早野圭一さんインタビュー

今回は北本市在住、緑地管理関係のお仕事をされている早野さんにインタビューを行いました。早野さんは奥さまと小学生くらいの息子さん・娘さんの4人家族で北本に暮らしています。平日のお仕事とは別に、休日には「荒川わらの会 」の活動や、北本市内の自然保護活動に参加されているそうです。インタビュー実施日の午前中も「わらの会」(※1) で管理している田んぼの水路の整理を行いました。

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―ご出身は北本ですか?
出身はとなりのとなり東松山ですね。北本には十数年前に結婚を機に引っ越してきて。妻の実家と自分の実家の大体真ん中あたりの場所ってことで選びました。

―北本に引っ越す決め手は何かあったんですか?
そうですね、学生のときに自然観察公園に行ったことがあって。その時は専門学校で造園の勉強をしていたのですが、緑地とか緑が好きだったんで。北本は鴻巣とか桶川とか近隣の町に比べると緑が多いっていうか、寂しいっていうか(笑)、忘れられたまちみたいな雰囲気があって。そういうほうが自分にはあってる気がして、決め手はとくにないですけど、成り行きでここに住むことになったって感じです。学生の頃、観察公園にフィールドワークに来たときは、まさかここに住むことになるとは思わなかったけどね。

―もともと緑地や緑に関心があったんですね
うん。もともと自然とか緑地とか、ビオトープ(※2)の勉強もしてたんで、そういうことに関わる仕事を探してて。たまたま見つかったところで、今も働いているって感じですね。ただビオトープの仕事を1年中やってるわけではなくて、ハンデをもっている人たちと一緒にビオトープの他に、緑地の管理をしたり、無農薬の野菜を作ったりしています。週末には今日の午前中にやったような「わらの会」の活動とか「とんぼ池公園」の活動をしてます。

―ビオトープの管理って何をするんですか?
例えば植物だと、そこに残さなきゃいけないものと残してはいけないものを理解して、それを整備していくって感じですかね。外来種が入らないようにするとか。だから調査も一つの仕事になります。いまこのビオトープがどういう状態かを調査する。草刈りだけじゃなくて。

いわゆる庭園の樹木管理ではずっと同じ樹形を保つ、木を大きくしない管理がほとんどなんです。いかにその大きさでとめるかっていう剪定ですね。ビオトープでの樹木管理では少し違います。里山で行われる管理では、大きく成長させた木を枝おろしして、間伐して薪に利用してみたいな。

―「とんぼ池公園」や「わらの会」の活動は引っ越してきた当初から参加されてたんですか?
最初からではないですね。引っ越してきた頃は北本でアートプロジェクト(※3) とかをやっていて。アトリエハウス(※4)があったり、雑木林でキッチンカーを出してイベントをしていたりして、そこに遊びに行ったんですよね。何回か参加しているうちにこういうイベントって誰がやってるんだろうと思って調べていたら、北本市観光協会のチラシで月に1回、誰でも参加できる「北本のこと考えちゃわナイト」っていうワークショップを開催していることを知って、そこに行くようになりました。毎月行くうちに、いろんなイベントを手伝うようになって、自分でも企画してみたりして。その延長線上に今の「とんぼ池公園」と「わらの会」の活動があるってかんじですね。

―「とんぼ池公園」では何をされてるんですか?
もともと「とんぼ池公園」は「里の会」という団体がメインで管理していたと聞いています。後から知ったんですけど。そのあとは近くにあるたかいたかい保育園が活動を引き継いだらしくて。今は岡野さんと自分が保育園と一緒に活動しています。麦畑をつくって、麦を収穫して「ほうとう」をつくったりとか。もともと谷津の地形だった場所なので、湿地をいかして田んぼづくりにチャレンジしたりしています。

―活動の目標というか、ゴールみたいなものはあるんですか?
この環境が維持されていくことが一番の目標と言えるかもしれません。そのためにはいろんな人を巻き込まないといけない。

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池のまわりで遊んでいた早野さんの息子さんが、駆け寄ってくる。その腕にはたくさん集めたリュウノヒゲの実が抱えられていた。深い青色の実がつやつやと春の陽を反射して美しい。

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ただこの環境を維持管理できるようにっていうのもひとつだけど、今のこういう感じだよね。子供がこういう体験をできる場を残したい、自分の子供に体験させたい。勉強とか習い事だけじゃ学べないことがたくさんあると思って、それは田んぼだったり、自然だったり、ああいう実をとってきて、皮をむくと透明だとか、それがすごい重要だと思っていて。大人になってからでもいいんだけど、子供のころにこうした経験をしてほしい。その感覚が絶対将来役に立つなって思ってます。

記事は後編へと続きます。


[※1] 北本市高尾で活動するNPO法人。使われなくなった田畑を借りあげ、会で共有し耕作することで景観の保全や復元に寄与することを目指し活動を行っている。(参考:http://kitamoto.net/waranokai/

[※2] 生物の生息空間を指す言葉。たとえば、トンボが卵を産み、ヤゴが育つ小さな池は、トンボのビオトープと言える。しかし、トンボは小さな池だけで一生を過ごすわけではない。成長段階や季節ごとに様々なタイプのビオトープが必要となる。すると、ヤゴが育つ小さな池もトンボになってからの生息域も全てビオトープということになる。(参考:https://www.biotope.gr.jp/about/

[※3] 2008年〜2012年まで埼玉県北本市では「北本ビタミン」というアート・プロジェクトが行われていた。08年にアーティストの日比野克彦の「明後日朝顔プロジェクト」に参加したことを契機に、アートによるまちづくりへの取り組みが始まった。(参考:https://artscape.jp/artword/index.php/%E5%8C%97%E6%9C%AC%E3%83%93%E3%82%BF%E3%83%9F%E3%83%B3

[※4] 一軒家を改築し、カフェ、アトリエ、レジデンス機能を備えた複合施設。「見たいのはこれまで見たことないものだ。」をテーマに掲げ生活に新しい価値観を提案する活動をしていた。2017年をもって活動を停止した。(参考:https://colocal.jp/topics/art-design-architecture/local-art-report/20130621_20255.htmlhttp://engawabiyori.net/2016lineup/food/kitamotoatelierhouse/